第35回“アトピー性皮膚炎がこんなにきれいになりました” アトピー性皮膚炎についてのお問い合わせは大変多くあります。 一般的にはステロイド剤の使用が主流です。西原式育児では、腸の成長に合わせた離乳食、体は常に温かく保ち、おしゃぶりの使用で鼻呼吸、ビフィズス因子の飲用など生活習慣の改善が主な方法です。 しかしながら、以上の西原式は、ステロイドのような即効性もなく、特殊な方法とみられる傾向があります。その上、父親や祖父母など周囲の理解が得られず、お母さんが孤立しがちです。 ここに離乳食を止め、栄養はミルクで取り、徹底的に体を温かく保ち、鼻呼吸を励行し、ビフィズス因子のヤングの飲用で改善したY.U.君の例を紹介します。お母さんが喜んで紹介に協力くださいました。 《Y.U.君 平成21年12月31日生まれ》 【相談までの主な治療経緯】 ◆平成22年3月26日 生後2か月26日 ◆平成22年4月27日 生後3か月27日 [塗り薬]:プロペト、サトウザルべ軟膏20%とテラ・コートリル軟膏の混合、リンデロンA軟膏、ネリゾナユニバーサルクリームとパスタロンソフト軟膏10%の混合、ヒルドイトローション0.3% →約2週間の薬の使用 ◆平成22年5月14日(同じ皮膚科で) 生後4か月15日 ◆平成22年6月7日 生後5か月9日 ◆平成22年8月27日 生後8か月 ◆平成23年11月14日 1歳11か月 ◆平成24年2月 2歳2か月 ◆平成24年2月28日(別の皮膚科で) 2歳2か月 ◆平成24年4月14日 2歳4か月 ◆平成24年5月8日(今年2月に受診した皮膚科で) 2歳5か月 →約1週間の薬の使用 ◆平成24年5月28日 2歳6か月 ◆平成24年6月20日 最初の相談から3週間後 ◆平成24年8月28日 2歳8か月 最初のご相談から3か月後 ◆現在8歳になったY君は、平成30年の4月から新3年生となり、元気に過ごしているとのことです。 小児科と皮膚科で処方された多くの対症療法薬でも治らなかったアトピー性皮膚炎の症状が、離乳食を止め、温かくし、鼻呼吸の習慣をつけ、ヒフィズス因子のヤングの抗菌作用・抗ウィルス作用の効果で劇的に改善され、表情もすっかり明るくなったY.U.君のケースを紹介しました。
「離乳食を止め、温かくし、鼻呼吸を心掛け、ビフィズス因子を飲みました」
初めて小児科で診察を受けて、ヒルドイドソフト軟膏0.3%とロコイド軟膏0.1%
初めて皮膚科で診察を受けた。
[飲み薬]:(朝)アレジオンドライシロップ1%、(夕)セレスタミンシロップ
3日後から、(朝)アレジオンドライシロップ1%、(夕)ポララミンシロップ0.04%、アタラックス-Pシロップ0.5%。
プロトピック軟膏0.03%小児用
アレジオンドライシロップ1%
アレルギー専門の小児科で血液検査
かかりつけの小児科で血液検査
季節の変わり目に、肌が荒れ出した。
アレジオンドライシロップ1%、ロコイド軟膏0.1%、白色ワセリン、サトウザルベ軟膏10%
風邪がこじれたのか、生まれて初めて喘息の様な症状が出た。
アスベリン散10%、プルスマリンAドライシロップ小児用1.5%、カルボシステインDS50%「タカタ」を1日3回服用
これまでにないくらい肌が荒れた。
アレジオンドライシロップ1%、リンデロンシロップ0.01%、リンデロン-VG軟膏0.12%、クロマイ-P軟膏、アンテベート軟膏0.05%、キンダベート軟膏0.05%、漢方のワグラス軟膏
◆この10日後に、西原研究所の電話相談室へご連絡いただきました。
【相談室の問い合わせ経緯】
先週の金曜日にお電話させていただいた、Uです。
よろしくお願いいたします。
京劇のお面のようになりかわいそうです。
お陰さまで、随分よくなりました。
湿疹がきれいになるまで、最後までがんばりたいと思います。
ありがとうございます。
お世話になります。
おかげ様で、周りの人達も驚くほどアトピー性皮膚炎がよくなりました!
ありがとうございました。
第34回“薬の効能を正しく理解しよう” 抗生物質の代表格のペニシリンはアオカビから発見され、感染症治療に使われ大きな効果があり、今では有効な抗生物質が次々と開発されています。 赤ちゃんが体調不良や具合が悪くなり医療機関を受診すると、先ず症状だけを取ることを重視する傾向にあります。熱があれば解熱剤、咳が出れば咳止めや気管支拡張剤、アレルギー症状があれば抗アレルギー剤か抗ヒスタミンです。そして、アトピーなどの皮膚症状に出されるのがステロイド剤です。 しかしながらこれらの対症療法薬は症状だけは取れるために、薬を飲みながら「元気に保育園に通っている」と言われることがあります。 症状が現れる元には原因があり、その原因の多くは何らかのバイ菌やウィルスによる感染です。 対症療法薬のステロイド剤を使用すると自身のステロイドを作らなくなり、また、抗アレルギー剤や抗ヒスタミンは、薬の性質上赤ちゃんの体温を下げ、元気もなくなります。抗生物質を使用すると耐性菌ができると言われますが、正しく感染症を見極めて効く抗生物質を適量使えば病気の完治につながります。 対症療法薬といえば、高血圧症の治療に有効な降圧剤は最近では嫌われる傾向にありますが、降圧剤の開発は脳卒中や脳溢血治療に役立ち、平均寿命を延ばしたことが知られています。また、血圧測定は医療行為であるので自宅で測るべきでないとの考えがかつてありましたが、今では家庭での血圧測定が普及し、高血圧症の予防に貢献しています。 降圧剤や家庭での血圧測定のように、薬の効能を正しく理解し、社会の風潮に惑わされないようにしましょう。 西原研究所では、抗生物質を使わずアトピー症状には極めて有効な方法として、抗菌作用と抗ウィルス作用のあるビフィズス因子のヤングの飲用をおすすめしています。 言うまでもなくヤングはビフィズス因子のため、腸内環境を整える作用もあります。 次回は、対症療法薬に頼らず、アトピー性皮膚炎が治った例を紹介します。
「ステロイドは正義の味方?抗生物質は悪者?」
必ずしもステロイドは正義の味方ではなく、正しく使用すれば抗生物質は悪者ではありません。
第33回“緑便が良くないわけ” 使い古された赤血球が肝臓で壊されると、その赤血球の中のヘモグロビンからビリベルジンを生じ、更に還元されて黄色い色素のビリルビンが作られます。このビリルビンは胆汁になり、胆道を通って腸へ流れるため、お通じは健康な赤ちゃんや大人では黄金色です。勿論、食べた物により便の色は変わります。肉食であれば、血液の関係で黒っぽいお通じとなります。 母子健康手帳には「便色カードの」が入っていますが、これは、胆汁が十分に十二指腸に流れない胆道閉鎖症を対象にしています。胆道閉鎖症は肝臓の機能に大きな影響を与えるためです。 「緑便が続いても、嘔吐も熱もなければ気にすることはない。」 昭和30年代までは、小児科や内科の待合室には便の標本が置いてあり、悪い便の代表に緑便がありました。 健康な赤ちゃんのお通じは、ビリルビンの色である黄色で、においは炊き立てのご飯のようです。 嘔吐や発熱がなくウィルスやバイ菌感染でない場合でも、緑便が続くと大腸菌のため肛門の周りが赤く爛れ、食べる割には体重が増加せず、常に不機嫌で、横向きやうつ伏せ寝で眠り、風邪やアトピー症状まで出ることがあります。 「外出先で乳児用ミルクを飲ませると次のうんちは緑便になり、自宅で母乳や乳児用ミルクを与える場合には黄金便になる」とよく言われます。 緑便は腸カタルのサインです。
「緑便は腸カタルのサイン」
しかしながら大変多いのが緑便で、受診をするとよく次のように言われます。
「便が溜まって酸化し、緑になるので心配ない。」
「胆汁が酸化したための色だから問題ない。」
緑便も鶯色の薄いものからホウレン草のような濃いものまで様々です。これらの標本は腸カタル(腸炎)として分類されていました。
かつては赤ちゃんの腸カタルや消化不良は大きな病気につながるとされていましたが、薬や医療技術が進んだ現在では問題にされなくなっています。
大きな落とし穴です。
消化不良・腸の冷え・冷えた乳児用ミルクなど食べ物の不適当などが原因で、腸内においてビフィズス菌が極端に減り大腸菌叢に変化すると、ビリルビンが酸化されて緑色の便になり、鼻を突くような臭いがします。
緑便の主な原因は冷えですから、先ずは手と足、お腹とお尻を触り十分温かいか確認しましょう。勿論、乳児用ミルクの温度は母乳と同じ41度厳守です。
また、血の巡りが悪くても緑便になります。見落としがちなのが靴下やズボン、おむつのゴムです。きつ過ぎないことを確認しましょう。
第32回“おしゃべりができるようになると口呼吸に注意” 生後約1か月の新生児の呼吸は1分間に30~60回程度で、鼻による腹式呼吸です。喉頭蓋と口蓋垂がまだ猿や猫のように繋がっているため、鼻でしか呼吸できません。食べ物(母乳やミルク)の通り道の食道と空気の通り道の気道は、立体交差しており別々の通路になっています。 ところが1歳前後を境にして喉の構造が変化し、食道と気道が喉の元で繋がり大人のヒト特有の仕組みになります。2種類の呼吸、つまり、鼻呼吸と口呼吸ができるようになります。この境目は、おしゃべりができるようになる時期にあたります。 400万年前の猿人から数十万年前の原人の化石の調査により、口蓋垂にはまり込んでいた喉頭蓋が離れた結果、言葉が楽々と話せるようになり、そのため大脳が大発達して原人が誕生したことが明らかになっています。言葉の習得時期には、原人も赤ちゃんもともに食べ物と空気の通り道の立体交差が無くなり、1点で繋がります。 赤ちゃんの喉の構造は、言葉の習得前では喉頭の位置が大人と比べてずっと高く、喉頭蓋は口蓋垂にはまり込んでいます。このため鼻から入った空気は口蓋垂に続く気道に入り、口から入った食べ物は気道の両脇を通って食道に入ります。このように2つの通路は繋がっていないため、呼吸をしながらお乳を飲むことができます。ところが喉頭が口蓋垂よりずっと下に下がると、食道と気道が共通になり、同じ通路を食べ物と空気が通るようになります。 「泣く子は育つ」と言われますが、泣くことで喉頭の位置が徐々に下がり、口から空気が出るようになり、これで発語ができるようになりました。 口呼吸ができるようになった1歳前後の赤ちゃんが、本能に従って吸啜運動をすると脳の血流がよくなり、大脳の言語野が非常に発達します。これが発語に続く言葉の習得につながります。 ヒトは言葉の獲得と引き換えに鼻呼吸を犠牲にしているわけす。口呼吸は万病のもとで、一種の構造欠陥と言えましょう。 赤ちゃんが、おしゃべりができるようになったら口呼吸にならないように注意が必要です。 ※ 喉頭=のどぼとけ
「口呼吸は言葉の習得による構造欠陥」
食べ物が気道に入るとむせたり、肺に入って誤飲をすることもあります。
この発語は、喉頭蓋と口蓋垂が離れて、口呼吸ができるようになる時期と一致しています。本来は食べ物の通り道である口から空気を出すことで、構音が可能になったのです。
第31回 “赤ちゃんの口呼吸もアトピーの原因” 「離乳食もまだ、母乳もいい」それにも拘わらず赤ちゃんがアトピー性皮膚炎の場合は、赤ちゃんが正しく鼻呼吸ができているか確認しましょう。 口呼吸になると、扁桃リンパ輪よりバイ菌が白血球に取り込まれ体を巡ります。このバイ菌が表皮細胞に達すればあかみと痒みを伴うアトピーになります。 早い離乳食つまり離乳食病の場合は、食べた物の消化が正しく行われないため、腸が苦しく横向き寝かうつ伏せ寝になってしまいます。横向き寝は必ず下側の鼻が押されて血行不良となりうっ血し鼻が詰まります。血中の酸素濃度は98~99%程度ないと苦しく感じるため、口が開きこれが口呼吸の始まりです。腸の成長に合った食べ物は育児の基本です。 寝具が軟らかいと寝方によっては窒息の危険があるとの指導から、硬い寝具が主流です。然しながら赤ちゃんは脂肪が優位のため、硬い寝具ではすぐに横向き寝かうつぶせ寝になります。下側の鼻が詰まるため口呼吸が連鎖します。また、窒息はうつ伏せ寝の際に自分の吐いた炭酸ガスで起こるという実験結果もあるため、適度な柔らかさの寝具とダウンふわふわ枕を使い、上向き寝で手足を自由に動かせるように寝る習慣をつけましょう。赤ちゃんが手足をバタバタ動かすのは呼吸の促進になり、窒息の心配はありません。 体の冷えは口呼吸の原因となるため、赤ちゃんの生活をする場所の温度と湿度、入浴温度をチェックしましょう。 最近ではフローリングに厚手のマットなどで寝る方が増えていますが、フローリングは床材とドアの下の隙間のため冷えるので注意が必要です。 鼻が通ってない場合は、まずは鼻孔に母乳を1滴たらすか、ご自分で鼻吸い器を使うのも有効です。鼻詰まりのため耳鼻科で鼻洗浄の場合、血管収縮剤が入っている場合は、リバウンドで鼻が益々詰まるので注意が必要です。 鼻呼吸ができているか否かは、口にガラスコップをかざし、曇る場合は口呼吸です。先ずは、確認をしてみてください。
「鼻の通りを確認しましょう」
赤ちゃんの口呼吸もアトピーの原因の1つです。
多くのうつ伏せ寝の赤ちゃんは、片方の腕を体の下に入れ、他方を体の横にそわせて掌を上に向ける姿勢をとるため、手足が自由に動かせず呼吸が抑制されます。
第30回 “アトピー性皮膚炎と蕁麻疹” 生き物は細胞から成り立っており、ヒトの細胞の数は数十兆個といわれています。1個の細胞は約10~30㎛の大きさです。それらの細胞は共通する構造は持っていても、器官により全く形も働きも異なります。 エビやサバなど特定の食べ物を食べた場合にあかみや痒み盛り上がりを伴う蕁麻疹や、薬による薬疹、何かに強くこすられた場合の物理刺激による蕁麻疹は数時間で発疹が消えます。 早い離乳食や悪い母乳などのため、バイ菌を抱えた白血球が、表皮細胞でバイ菌をばら撒く場合は、次々とあかみや痒みを伴う皮膚症状として現れます。発疹が消えないで長い間残り続けるのがアトピー性皮膚炎です。 真皮の下の皮下組織には結合組織や細動脈があり、そこから生えてきた毛細血管が真皮には網の目のようにめぐらされています。真皮の毛細血管で養われている表皮にはびっしりと細胞が重なっており、毛細血管もありませんが真皮のリンパ液の栄養で養われています。この重なり合った細胞群が体の外側と内側を隔てているため、バイ菌やウィルスを消化する白血球のような力を持っています。表皮の最も外側には、細胞核を失った細胞の皮化した角質層があり、これもまたバイ菌やウィルスの体内への侵入を防いでいます。 このように外界と体内を隔てる皮膚は幾層ものバリアーでバイ菌やウィルスを防いでいるにも拘わらず、真皮内で毛細血管から取り込まれたバイ菌が表皮細胞内に侵入するのがアトピー性皮膚炎です。表皮細胞内のミトコンドリアの働きが障害を受けて細胞内で炎症を起こし、細胞の働きが損なわれた状態なのです。 あらゆる器官の細胞内にバイ菌がばら撒かれれば、細胞内のミトコンドリアが障害を受ける器官によって中耳炎、膀胱炎、喘息など様々な病名がつけられます。この時細胞内レベルでは同じことが起こっています。
「細胞内で何が起こっているの?」
第29回 “西原研究所では母乳の良し悪しを顕微鏡観察で判断” 赤ちゃんの体調不良の原因には早期の離乳食(いわゆる離乳食病)、悪い母乳、赤ちゃんの口呼吸、予防接種が引き金など原因は様々です。 母乳育児の赤ちゃんが、様々な不調で西原研究所を受診されます。初診時に母乳の顕微鏡観察をすると、しばしば母乳に問題が認められます。それは、脂肪滴が少ない母乳つまり栄養不足や、汚い脂肪滴で感染が考えられることが多々あります。母乳の顕微鏡画像をオーリングテストすれば、バイ菌やウィルスを抱えた母乳であることが判定されます。これらについての対処法を紹介します。 【お母さんへの対処法】 【症例1】お母さんが乳児用ミルクを食べて母乳が改善した例 ◆冷中毒と口呼吸による喉・副腎の細胞内感染症の母親の脂肪滴の少ない栄養不足の母乳 お母さんが乳児用ミルクを食べた15分後には脂肪滴の増加が確認できた。口呼吸の赤ちゃんにおしゃぶりを与えるとともに、改善後の母乳を飲ませたところ、明らかに顔色が良くなった。 【症例2】お母さんの生活習慣の改善で母乳が良くなった例 ◆冷中毒、短時間睡眠、花粉症の母親の汚い母乳 改善前はオーリングテストで+1で感染が認められたが、少量の抗生物質と固形乳児用ミルクを3個食べたことろ30分後には改善され、脂肪滴もきれいになるとともにバイ菌も消失した。改善後の母乳はオーリングテスト+2となった。 【症例3】玄米の食習慣を改めるとともにビフィズス因子(ヤング)の飲用で母乳が劇的に改善した例 ◆免疫病の潰瘍性大腸炎、アトピー、緑内障の母親のバイ菌だらけの母乳 お母さんの既往歴からすると、8か月の赤ちゃんのアトピーの原因は母乳であるため、乳児用ミルクを勧めたが、お母さんが乳児用ミルクを嫌ったので母乳の改善を急いだ。ヤングの飲用と同時に玄米食を白米に変え、赤ちゃんにおしゃぶりを与えたところ劇的に症状が改善した。 【症例4】お母さんが玄米をやめると母乳中のバイ菌が極端に減り、良い母乳になった例 ◆お母さんの玄米食により、赤ちゃんが1年間腹痛と血便がつついた時の初診時の母乳 お母さんが健康のために続けていた玄米食が、赤ちゃんの腹痛と血便の原因と判明したため玄米食を止めたところ、母乳の質が改善した。初診時の母乳はオーリングテストで-2、改善後は+1となった。
【症例5】固形の乳児用ミルクを食べて母乳の質が改善した例 オーリングテストで改善前は+1でバイ菌が認められたが、改善後は+2で脂肪滴が劇的に増加して、栄養豊富な母乳となった。
「母乳の改善の実際症例」
第28回 “母乳育児なのにアトピー??” 赤ちゃんは、お母さんから栄養を妊娠中は臍帯から受け取り、生れてからは母乳でもらいます。いわば母と子は一心同体、運命共同体です。お母さんの健康状態が母乳にあらわれ、即、赤ちゃんに影響を与えます。母乳は赤血球の抜けた血液のようなものです。 「離乳食も与えていないのにアトピーに!」、「離乳食をやめ母乳にしても改善がない!」といわれることがあります。 このような場合は、お母さんの生活習慣、食生活、免疫病を患っていないかを確認してください。口呼吸や冷中毒、うつ伏せ寝や横向き寝などの悪い寝相、いびき、あるいは、香辛料の強い辛い物や玄米の食生活、免疫病(アトピー、喘息、リューマチ、潰瘍性大腸炎など)の場合は、お母さんの腸のバイ菌が白血球に取り込まれ、その白血球に乗ったバイ菌が母乳に出ます。赤ちゃんは大量のバイ菌いりの母乳を飲まされるのですから、たまったものではありません。多くの場合、母乳は苦くなるため、赤ちゃんはこれを拒否してお母さんの乳首を噛みます。 「何時間くらいで食べ物の影響が母乳に出るの?」と、尋ねられることがあります。 「母乳に悪い物でも好きなので何とか食べたい!!」 蕁麻疹でも分かるように、食べた物の影響はすぐに現われ、同時に悪い食べ物は腸内の常在菌を悪玉菌に変えてしまします。少々なら大丈夫と思って冷たいビールを飲んだり、カレーやアイスクリームを食べるとすぐにもバイ菌入りの母乳となり、腸内環境も悪玉菌叢に変化します。食べ物の種類や温度、丸呑みや噛まない食べ方などは必ず母乳の良し悪しに現れます。 例えばお母さんが玄米の食習慣であれば、玄米には発芽抑制蛋白質(酵素)のフィチン酸やアブシジン酸などの有害物質が含まれているため、母乳であっても赤ちゃんに赤い皮疹が出たり、ひどい時には血便にもなります。 離乳食をまだ与えてもいないのに母乳でアトピーになるのは、お母さんの腸のバイ菌入りの母乳が原因です。 お母さんの腸のバイ菌入りの母乳で赤ちゃんが罹る病気は、アトピー性皮膚炎ばかりではありません。風邪症状、喘息、発熱、膀胱炎、内耳炎、滲出性中耳炎、肺炎、緑便、便秘など様々です。これらの病気は、すべて各器官の細胞内にお母さん腸のバイ菌がばら撒かれた結果、細胞内のミトコンドリアの働きが障害を受けて炎症を起こし、細胞の働きが損なわれた状態なのです。これがいわゆるアトピー性皮膚炎を初めとする赤ちゃんの免疫病です。 離乳食を開始もせず、母乳育児にもかかわらずアトピーの場合は、お母さんの食生活と生活習慣を見直し、腸内のバイ菌が血液中を巡らないようにしましょう。 お母さんの腸内のバイ菌が、母乳に入るからです。
「バイ菌入りの母乳が原因だった」
第27回 “アトピーは早過ぎる離乳食のタンパク質が原因だった” 食べ物の中のタンパク質は、胃や腸などの消化器官で分解酵素によって、消化管の粘膜を通過できる大きさのポリペプチドやアミノ酸に分解されます。その分解されたものが、血液やリンパ球に取り込まれて栄養となります。 赤ちゃんから大人まで、母乳や食べ物が分解・消化・吸収されて栄養となり、血や肉になる過程はまったく同じです。 然しながら、大きく異なるのがパイエル板の大きさと血圧です。 赤ちゃんの腸の特性が乳児ボツリヌス症事件で明らかになったように、腸の壁のパイエル板は、ボツリヌス菌の芽胞をも通してしまうくらい、大人と比べて大きなものです。腸管に入ったバイ菌やウィルスなどの悪玉菌は、簡単にパイエル板内にいる白血球に取り込まれてしまいます。 バイ菌は、腸が吸収できる消化されたタンパク質のポリペプチドに比べて、何万倍も大きなものです。 赤ちゃんの持つ消化酵素は、母乳のカゼインにのみに有効なため、それ以外のタンパク質は分解・消化されずに分子の大きいタンパク質のままで残ります。早すぎる離乳食の中のタンパク質は、生まれる時にお母さんから受け取り盲腸のパイエル板にしまわれていた腸内微生物の餌となり、ビフィズス菌のような善玉菌ばかりの腸内微生物を、悪玉菌や病原性を持つ常在菌に変化・増殖させます。 実験でバイ菌を培養する培地といわれる液は、タンパク質の宝庫の牛肉のブイヨンです。まさにこの培養の培地の状態が、赤ちゃんの腸で起こり、せっかくお母さんからプレゼントされた腸内微生物が、離乳食に含まれるタンパク質を食べることによって悪玉菌や有害な常在菌に変身してしまいます。 また、赤ちゃんと大人で大きく異なる点は、血圧です。赤ちゃんは30mHg(水銀柱)で生まれ、60mHgで立ち上がり、乳児として完成するまでは平均でほぼ70mHgです。 血圧が70m Hg以下では、腸内微生物は自動的に白血球に取り込まれてしまいます。 血圧の低い赤ちゃんは、悪玉菌や病原性を持った常在菌が、腸などのパイエル板から自動的に白血球に取り込まれます。そしてそれらのバイ菌群を抱えた白血球が体内を巡り、皮下組織の小動脈から真皮の毛細血管に入り、そこで白血球の膜が開いて悪玉菌や病原性を持った常在菌が撒かれます。次いでそれらのバイ菌群はリンパ液に乗って表皮細胞に達します。皮膚の表面はびっしりと表皮細胞でおおわれています。それそれぞれの表皮細胞では、リンパ液に乗ってやって来たバイ菌群のうちそれぞれ少量の2~5粒を取り込んで消化(退治)します。その際に出る症状があかみと痒みのあるスポット状になりますが、バイ菌が消化されてしまうと皮膚は元のようにきれいになります。 真皮内で毛細血管から取り込まれたバイ菌群がリンパ液によって表皮細胞に運ばれ、表皮細胞内で消化される暇もなく、次々と連続して起こるのがアトピー性皮膚炎です。離乳食を食べるたびにバイ菌に餌が供給され、腸の中に生えてきたバイ菌は白血球にかかえられ体を巡ります。バイ菌が次々とばら撒かれるため、表皮細胞内で消化しきれなくなり、そのバイ菌があかみや痒みを伴う発疹を連続して発症させます。 多くの小児科や皮膚科の先生方は、アトピーがきれいになったことを無視して、「細胞内にバイ菌が入ることはない」「栄養が不足する」といわれます。しかし、多くの赤ちゃんが、離乳食を母乳や乳児用ミルクに替えるだけで治っています。 育児中のお母さんは、赤ちゃんの体重について一喜一憂し、増加がみられなければすぐに栄養のあるタンパク質を与えたがります。赤ちゃんに与えた食べ物が消化・吸収され初めて体重が増加します。赤ちゃんはまだ、消化酵素持っていないため、タンパク質を分解・消化することも、毒性の除去もできるはずがありません。そのタンパク質、つまり早い離乳食が腸内微生物を悪玉菌に変えると、赤ちゃんの腸の性質から、すぐに白血球に取り込まれて体中を巡り、表皮細胞にばら撒かれることを忘れないようにしましょう。 「離乳食をやめるとアトピーがきれいになった」とよく言われます。アトピー性皮膚炎のあかみや痒みは、皮膚の表皮細胞内にバイ菌による感染がおこったための症状にすぎません。離乳食のタンパク質が引き金となる単なる細胞内感染症のため、離乳食を中止すると改善につながるわけです。
「離乳食で腸内微生物が悪玉菌になる」
第26回 “自然分娩の秘密” 帝王切開でで生まれた人は、母親からビフィズス菌や腸内微生物を受け取っていないため、大人になってから極度の便秘や下痢など腸の不調が続くことがあり、欧米ではこれを改善するために、他人の糞便を移植するケースがあります。 自然分娩の赤ちゃんは、一般的に皮膚や肺が丈夫なことが知られています。産道を通る際に、膣内に充満しているビフィズス菌を肺や腸内いっぱいに受け取ります。また、狭い産道を通る時に、皮膚全体が締め付けられるうえに、肺から羊水を十分吐き出せるからです。 さらに最近では、自然分娩のメリットとしてお母さんから受け取るビフィズス菌や腸内微生物の重要性が、ヒト微生物叢(=マイクロバイオーム)の研究の一つとして着目されるようになりました。ヒト微生物叢とは、ヒトの全身にいる細菌・真菌・ウィルスなどのすべての塊のことです。口腔・鼻腔・耳・呼吸器・消化器・生殖器など全体にいて、栄養・エネルギー・ビタミンの供給や免疫作用・代謝の調整などの役割を担っていることが明らかになっています。その中でも消化管にいる腸内微生物の働きなくしては、排便すらままなりません。 自然の正常分娩の場合には、まず生まれる赤ちゃんは、ビフィズス菌を肺や胃腸に吸い込んだ後、妊婦に起こる出産時排便反射で出される腸内微生物を、回転しながら口から啜り込みます。口も肺も胃腸内もビフィズス菌でみたされているため、これらの細菌やウィルスの腸内微生物は全く増殖することはありません。そしてこれらの腸内微生物は、素早く胃腸を通って盲腸のパイエル板にしまい込まれます。ビフィズス菌と腸内微生物は、生まれる際のお母さんからのプレゼントのようです。 これらのビフィズス菌やおおよそ4,000種類・200兆個の腸内微生物は脊椎動物にほぼ共通しており、自然分娩の時の排便反射を通して、腸の微生物叢の性質が代々子供に伝わります。赤ちゃんの腸は、ビフィズス菌とともに腸内微生物を抱えています。腸内微生物は条件によっては、善玉菌にも悪玉菌にもなることを忘れてはいけません。せっかくお母さんからもらった腸内微生物です。授乳期間が完了した1歳半から2歳頃より、徐々に正しい赤ちゃん食に従って健康な善玉菌の腸内細菌叢に育てましょう。 免疫抗体に似た作用もある腸内微生物は、臍帯を通してもらう免疫物質と、母乳を通しての母親の白血球や免疫物質とともにお母さんからのプレゼントです。 ◆腸内微生物=腸内にいる常在菌や細菌やウィルスなど
「赤ちゃんはお母さんから腸内微生物までプレゼントされていた」
◆出産時排便反射=妊婦が出産時に、特有の数千種類・数兆個の腸内微生物を含む特殊な排便をすること
第25回 “アトピー性皮膚炎とステロイド” ステロイドは、腎臓の上部にある副腎の皮質部分で作られるホルモンで、副腎皮質ホルモンとよばれます。そのホルモンのうちの「糖質コルチコイド」という成分を化学合成したのが薬のステロイド剤で、合成に成功した当初は、「人類の夢の新薬」とも言われたのです。広範に炎症を鎮め、免疫作用を抑制する働きがあるため、主に膠原病、関節リュウマチ、気管支喘息、アトピー性皮膚炎などの炎症性の疾患に使われました。 然しながら今では、服用や塗布でステロイド剤を使用するうちに、副腎皮質が委縮し自前のステロイドを作らなくなるため、使う量も増え、次第に強力なものを使用するようになり、止めるとリバウンドで症状が悪化するなど、副作用が問題となっています。同時に免疫力が抑制されますから、感染症の発症も心配です。 アトピー性皮膚炎と診断されステロイド剤が処方されても、外部からステロイドを塗るだけで自前のステロイドを自然に作らなくなることを思い出しましょう。ステロイド剤はあくまでも火消し役で、使用すると症状はすぐに治まります。しかし、赤ちゃんのアトピーの主な原因は早い離乳食による腸内の悪玉菌によるものです。喘息は、同じく腸内のバイ菌が気管に症状として現れたものです。 ステロイドで効果があればその時がチャンスですから、ステロイドのみに頼るのではなく、アトピー性皮膚炎の原因をとなる離乳食を乳児用ミルクに戻すなどして、根本的に治す必要があります。 祖父母や時には父親からも、ステロイド剤を使うよう言われ、孤立するお母さんも多くいらっしゃいます。ステロイド剤の性質を理解して、落とし穴に落ちないよう注意しましょう。
「ステロイドの落とし穴」
第24回 “乳児ボツリヌス症事件” アメリカで1976年から1978年にかけて起きた、ボツリヌス菌の芽胞が混入した蜂蜜を食べた1歳未満の多くの赤ちゃんが乳児ボツリヌス症で死亡しました。これが「乳児ボツリヌス症事件」です。 ミツバチが腐った肉にとまった際に、足にボツリヌス菌がつきそれが蜂蜜に混入したとの説が一般的です。 乳児用に発売されていた蜂蜜がボツリヌス菌によって汚染されており、多くの赤ちゃんがその菌の出す毒素により発症し死に至ったのです。この事件を契機にアメリカで研究を行った結果、乳児の腸の特殊性が明らかになりました。2歳半頃までの赤ちゃんの腸は、母乳の成分以外は消化能力がほとんどないということと、未完成で目の粗いザルのようであることがわかったのす。本来なら腸の壁から吸収されないくらい大きなボツリヌス菌の芽胞までも、赤ちゃんの腸は吸収してしまうのです。 哺乳類には一定の授乳期間があり、ヒトでは2歳半頃までです。その間の腸内細菌は、母乳のタンパク質のゼインを消化するビフィズス菌が中心です。早く離乳食を与えると、腸内細菌がビフィズス菌中心から大人型の悪玉菌となり、この菌や巨大な分子のタンパク質がそのままパイエル板と呼ばれる消化器官の壁を通過して、白血球に入り血中を巡ることが明らかとなっています。 乳児ボツリヌス症事件を通して、赤ちゃんの腸の特性をしっかりと理解をして子育てをしましょう。
「赤ちゃんの腸の壁は粗いザルの目だった」
第23回 “離乳食病への落とし穴” 西原育児は、赤ちゃんの腸の発達に合わない早期の離乳食によるアトピー性皮膚炎・喘息・中耳炎や滲出性中耳炎などいわゆるアレルギーマーチと発達障害・自閉症・癲癇などを離乳食病と呼んでいます。 1970年代にアメリカで起こった乳児ボツリヌス症事件で、赤ちゃんの腸の性質は、大人の腸とは全く異なることが明らかになったにも関わらず、文明国では日本だけでその特性が無視され、離乳食病の赤ちゃんが作られています。 掛かりつけ医の受診時や保健所の定期検診では以下のような注意がよくあります。それらが離乳食病への落とし穴かもしれません。 「体重が増えていないので、牛肉やレバーを与えなさい。」 赤ちゃんの腸の性質を無視しています。 「予防接種が受けられないから早く卵を食べさせなさい。」 ワクチンは受精卵の胚で培養されますが、ワクチン自体は卵培養液から完全に分離・精製されますから、卵の性質が残ることはありません。 「顔色が悪いのは鉄分不足が原因だから、離乳食とともに鉄剤を飲ませなさい。」 赤ちゃんに鉄分だけを与えても吸収されるものではなく、緑便の原因になります。 「栄養不足で脳の発達が悪くなるので、早く離乳食を開始しなさい。」 赤ちゃんにとって、完璧な栄養食は母乳とそれに準じた乳児用ミルクです。 「歩き始めるのが遅いのは、骨や筋肉を作るタンパク質が不足しているためで、 十分血圧が上がらなければ、立ち上がることも歩くこともできません。 「味を覚えさせないと偏食になるのでいろいろ食べさせなさい。」 赤ちゃんの味蕾は発達していません。 「噛めない子になるので、早く離乳食を与えなさい。」 食べ物を十分噛むことができる歯は、2歳から2歳半ごろに生え揃う乳臼歯です。 以上の他に、「アレルゲンを早期に与えるとアレルギーの抑制に効果」とのことが英医学雑誌のランセットに発表され、それを実践する先生がいらっしゃいます。卵アレルギー予防のためにと卵を食べさせられた5か月程の赤ちゃんが、突然顔が赤くなり、唇が膨れ上がったという例が相談室に2,3あります。 また、ネット上には蜂蜜を使った離乳食が紹介され、最近では「蜂蜜には栄養があると思った」お母さんが、蜂蜜を与えて6か月の赤ちゃんが亡くなったという新聞報道もありました。 赤ちゃんは大人のミニ版ではないことを理解し、赤ちゃんを離乳食病から守りましょう。
「赤ちゃんは大人のミニ版ではありません」
大人では吸収できない分子の大きいタンパク質を吸収し、腸内細菌叢がビフィズス菌叢から大腸菌叢に変わります。
卵を食べていなくても、抗原・抗体反応が起こる心配は全くありません。
母乳育児の場合は、お母さんが鉄分の多い食事を心掛け、赤ちゃんには日光浴をさせましょう。
同等の栄養を離乳食で確保することは不可能です。
なぜなら離乳食のタンパク質はアミノ酸にまで分解されていないからです。
赤ちゃんの胃腸は、母乳以外のタンパク質を分解する酵素は持っていません。
腸の特性から早期のタンパク質の摂取が、腸内細菌を悪玉菌にして脳にも害を及ぼします。
栄養のあるものを与えなさい。」
ハイハイで首の横の頚洞を鍛え、赤ちゃんの血圧を上げましょう。
乳児の間は、母乳や乳児用ミルクの味で十分です。
これが生え揃う前に食べ物を与えると、ズルズルすべて丸呑みにするだけです。
この丸呑み期を「ゴックン期」と呼び発達の目安とされますが、これは噛まない子を作る引き金です。
母乳やそれに準じた乳児用ミルクを吸う吸啜が、噛む子をつくるのです。
第22回 “良い母乳をだすために” 生まれたばかりの赤ちゃんは、口の周りに乳首を感じると本能的に吸い付き、鼻呼吸をしながらお乳を吸います。これは鼻呼吸と一体となった、母乳の栄養摂取法で哺乳動物だけの持つ本能です。 お母さんは誰しも、赤ちゃんを母乳で健やかに育てることを望みますが、母乳の出が悪い、乳首を噛まれる、母乳で真っ赤になるなどの相談を受けます。 母乳は、赤血球だけが完全に抜けている特殊な血液のため白血球を含んでいます。良い母乳であれば、母乳に含まれる白血球がバイ菌を消化するので、母乳育児の子は免疫力が高いといわれます。然しながら、母親が冷たい物や香辛料の強い物や玄米など不適当な物を食べたり、口呼吸や低体温であれば、免疫力が低下し、消化しきれなかったバイ菌を抱えた白血球が体を巡ります。母乳の良し悪しは、母親の食べ物の質や温度と体温に大きく左右されます。 バイ菌を抱えた白血球が乳房に達すれば乳腺炎になり、お乳に出れば苦くなるため赤ちゃんは乳首を噛み、赤ちゃんの皮膚に現れれば赤みや痒みのアトピー症状となります。 さて、良い母乳を出す第一歩は、絶対に手や足、肌、腸を冷やさないことです。常温の水も生野菜も避けましょう。腸を冷やすと自動的に腸内細菌(腸内微生物)がM細胞のステムセルに取り込まれてバイ菌入りの顆粒球となり母親の白血球が汚染されてしまいます。バイ菌入りの白血球の入った母乳は乳腺炎、苦い母乳、赤ちゃんのアトピー症状の原因です。 授乳中の母親がビール・日本酒・ワインなどアルコール類を飲んだり、カレーや塩辛など香辛料の強い辛い物、また、刺身やクサヤなどの古い干物やビーフジャーキーなどを食べれば、てき面にバイ菌入りの白血球(=顆粒球)の入った母乳が出ます。魚や肉の干物は動物性たんぱく質が劣化した有害物質のアミンを含むことが知られています。 「インドの人は3食カレーを食べているのに大丈夫」とよく言われます。インドの医療について順天堂の奥村先生(有名な免疫学者です)は、「癌の研究は今のところ必要ない、癌年齢になる前に死んでしまうから」といわれています。寿命は食生活の影響を多く受けます。食べ物はその国の気候・風土を背後に控えた文化であるため和食中心の食生活がよい母乳の要です。 また、最近では理想的な栄養食といわれる玄米・発芽玄米・雑穀類は発芽抑制酵素のアブシジン酸やフィチン酸を含むので適しません。玄米食のお母さんの母乳で血便になった赤ちゃんの例もあります。また、過度の小麦製品の摂取は、小麦たんぱくのグルテンが腸内に悪玉菌を増やし、牛乳は妊娠牛のミルクのためホルモン物質を多く含み、牛乳のカゼインも腸内に悪玉菌を増やします。 勿論、喫煙が母乳に良いわけがなく、同居家族の喫煙にも注意が必要です。 良い母乳のために 食事は、白米のご飯と野菜中心の煮物・煮魚などの和食中心で、時折、好みにより少量の肉類を加え、間食にはおいしいお茶と羊羹などの甘いものも食れば、精神的にも安定し、「辛抱と我慢の育児」から「楽しくてやさしい育児」になります。 普通の牛乳は妊娠牛のためお勧めできませんが、乳児用ミルクは分解されているため安全で、お母さんが固形の乳児用ミルクを食べる(ガリガリかじる)と消化吸収が大変良く、すぐに良い母乳につながります。また、マヌカ蜂蜜もお勧めします。 「お米、野菜はすべて無農薬を取り寄せ、お水は天然水—」といわれることがありますが、いくら良いものであっても、冷たければ全く意味がありません。 母乳の出具合など健康は、それが無農薬であるなど質量のある物質にのみ目を向けるのではなく、温熱エネルギーに影響を受けることを認識するとよい母乳の出につながります。 そして、死菌で抗菌作用・抗ウィルス作用もあり、腸内細菌を整えるヤング(young)などのビフィズス因子をお勧めします。
「体を冷やさないようにし、お母さんが乳児用ミルクを食べよう」
—玄米、雑穀、干物、カレーなど香辛料の強い物、塩辛など辛い物、アルコール類、アイスクリームや冷たい飲料など、刺身
—喉の扁桃リンパ輪から、バイ菌が白血球に取り込まれるので注意
第21回 “体重を増やすために―甘酒は乳児用ミルクの代替になるのか?” 西原式育児は、小ぶりでもアトピー症状のないピカピカの赤ちゃんに育てることを目指しています。西原式の体重曲線を尋ねられることがありますが、特殊な育児ではなく、月齢と体重の成長の目安は、母子手帳の下限程度が最適と考えています。 最近特に多いのが、甘酒を乳児用ミルクの代替にというものです。甘酒はその名のとり、含有はわずかですがアルコール分も含んでおり、乳児用ミルクの代替にはなりません。甘酒は米麹による発酵食品でビタミン、ミネラル、アミノ酸、ブドウ糖などを多く含み体に良いのですが、これはあくまでも成長した大人にとってです。大人と2歳半までの乳児の腸の性質は全く異なります。赤ちゃんに単に栄養豊富なものを与えれば太るものではなく、消化・吸収されて初めて体重増加につながります。2歳半頃までの乳児は母乳のカゼインに対する消化酵素しか持っておらず、母乳の代替品はそれに準じなければいけません。以下の食べ物も赤ちゃんの腸には適さないので注意が必要です。 ・鶏のスープ:ブイヨンにタンパク質が含まれる 大変よくあるウッカリが、哺乳瓶の乳首の劣化の見落としです。月齢とともに吸う力が増せば早く劣化して乳首の穴が大きくなり、ミルクの出が多くなります。多くなれば一気飲みに近くなるため、胃に留まらず胃の小弯から十二指腸に流れ、消化不良を起こします。飲むミルクの量の割に体重が増えなければ、乳首の劣化が考えられるため、新しいものに取り換えましょう。何か月も取り換えない場合が多くみられます。 鼻呼吸ができていれば体温が上がるため、日中で37度程度となり腸がよく働き、ミルクの濃さを調節し、加えてミルクの温度や出方が適切であれば、お通じが毎日1-2回・黄金色で炊き立てのご飯のようなにおいとなります。 体重が軽ければ、先ず、乳首の劣化を確認して取り換え、ミルクを10%ほど濃く調整したミルクを赤ちゃんに与えてみてください。
「哺乳瓶の乳首の新しいものへの交換と10%濃い乳児用ミルクを試そう」
然しながら乳児検診では、体重が少なめであると、ピカピカであるにも拘わらず体重不足を指摘され、離乳食を始めるように厳重に注意を受けます。このため西原式に不安を持ったお母さんから、太らせるための食べ物について様々なお問い合わせがあります。
・海苔:硫黄やリン酸を多く含む
・ちりめんじゃこ、しらす、煮干しのだし:動物性タンパク質の劣化したアミンを含む
・玄米スープ:フィチン酸、アブシジン酸を含む
また、オシッコや排便の具合で水分量が多いようであれば、粉ミルクを10%ほど濃くなるよう調整することをお勧めします。10%程度の増減は全く問題ありません。
以上は腸がよく働き、食べたものがうまく消化・吸収されている証で、体重増加につながります。
第20回 “水分補給は適切に” 「熱中症予防に十分な水分補給を—-」この繰り返されるキャッチフレーズのためか、やたらに赤ちゃんに水分を取らせたがるお母さんがいらっしゃいます。 熱中症を引き起こす環境は、高温・多湿・無風です。恒温動物のヒトは、体温を36-37度くらいに保つよう、環境に合わせて汗をかき、血液を皮膚の表面に集めて体温を下げるように調節します。その調節機能が働かない状態が熱中症です。熱中症の原因の1つが脱水状態のため、水分補給を十分にといわれます。 然しながら、2歳半ごろまでの乳児の場合は、熱中症の原因の高温・多湿・無風の環境に置かないことが重要です。汗をかく汗腺と自律神経の発達が未熟なため、上手に体温調節ができません。暑さ・寒さに対して順応ができないので注意が必要です。 帰省や家族旅行など外出時に、熱中症予防にと水分を持ち歩き、やみくもに与える傾向がありますが、これは胃腸と体を冷やすだけです。 水分補給をする際は、水分の過・不足は尿での確認が簡単です。もちろん個人差はありますが、サラサラとした薄黄色は補給は不要、少し濃い黄色は要水分補給です。ジャージャーと尿が出ているにも拘わらず、水分補給をするのは慎みましょう 炎天下に出ることは避け、通気性の良い衣類で、母乳や乳児用ミルクで水分を取っていれば、通常、水分補給をする必要はありません。水分補給はあくまでも不足分を補給するもので、過度に与えれば胃腸に負担をかけるだけです。体温上昇がある場合は、先ず外から冷やし、夏バテのない生活を送りましょう。
「夏バテは過度の水分補給が原因だった」
夏になると、幼い時から子供のころの思い出作りと、特に最近ではプールや行楽地に出かけますが、乳児として完成する2歳半ごろまでは控えましょう。
暑さのため過度の水分補給を行い、胃腸が弱り食欲が低下し、9、10月の秋口になると原因不明の発熱や下痢になります。これが夏バテです。
体温が上がる傾向が見られれば、先ず、首の横・脇の下・足の付け根など太い動脈の血流の豊富なところを水道水で濡らしたタオルで体の外から冷やしましょう。暑い様子が見られれば、濡らしたタオルで手や足を拭くだけでも十分です。
乳児の場合は、尿・便・呼吸・汗で出ている水分は、食事やミルク、母乳で十分補えています。入浴や外出などで汗をかいても、水分補給はお白湯(38度程度)で十分です。
第19回 “歯の生え具合で食べ物が決まる” 赤ちゃんの食事の様式は、口の周りを刺激すると本能的に乳首に吸い付き母乳を呑む吸啜反射から、吸うことを学習した自発吸啜を経て、乳臼歯まで20本の歯が生え揃い、初めて離乳食を頬の内側に溜めて噛む咀嚼へと変わっていきます。 動物は、何をどのように食べるかにより、肉食性・草食性・雑食性などに区分されています。それらの大きな違いは、歯の形に顕著にみられ、肉食性では切り裂き噛み砕くための歯であり、草食性では臼と杵のようなすり潰すための歯です。雑食性のヒトの場合は、切歯、犬歯、臼歯(赤ちゃんは乳臼歯)を持っています。切歯で噛み切ったり、犬歯で引き裂いた食べ物を、頬の内側に貯め、臼歯(乳臼歯)ですり潰しながら舌で唾液と混ぜる口腔内消化を行い、飲み込みます。 赤ちゃんが、食べ物を消化し、栄養を吸収し易いようにすり潰すことができるのは、乳臼歯であり、切歯や犬歯ではありません。5,6か月で離乳食を開始すれば、乳臼歯の生えていない赤ちゃんが咀嚼できるはずもなく、イヤイヤをしながら最後は根負けをして、ただ口に入ったものを丸呑みにするだけです。臼(凹)と杵(凸)の形をした上下の乳臼歯が生え揃って噛み合うことで、初めて十分に咀嚼ができます。咀嚼を十分することで、唾液腺より消化酵素が分泌され消化を助けるために栄養の吸収もよく、加えて胃腸がよく働きよいお通じにつながります。 赤ちゃんの乳歯列20本の完成は、個人差はありますが、2歳半と言われています。育児書に則り5、6か月から離乳食を開始するのではなく、赤ちゃんの歯の生え方を観察して、食べ物を決めましょう。 お母さんが、カレーライスのような香辛料の強い物や冷たいもの、アルコールなど不適切な食べ物を食べたり飲んだりすると、腸内のバイ菌や毒物が血液に吸収されてめぐり、母乳も汚染され苦(にが)くなります。この苦い悪い母乳を飲まされた赤ちゃんは、乳切歯で乳首を噛みます。乳臼歯の生え揃う以前の歯は、食べ物を噛むための歯ではなく、お乳のための歯です。 乳首を噛まれるお母さんは、苦い母乳への拒絶反応ですから、母親の生活改善が必要です。おいしい母乳なら決して噛むことはなくて、大切に吸ってくれます。 母乳やミルクから離乳食への移行期はありますが、本格的な離乳食の開始は、乳臼歯が生え揃った時が目安です。
「本格的な離乳食の開始は乳臼歯が生えてから」
第18回 “よく噛む子にするために その2” 原始時代のサメ(原始脊椎動物)は私たちヒトの遠いご先祖です。哺乳動物の頂点に位していると言えども、生物進化を抜きにして今の人類はありません。 サメは水を取り込む時に、栄養を取り込む摂食運動と酸素を取り込む呼吸運動を、同時にエラの呼吸筋肉で行っています。エラ呼吸筋肉による鰓呼吸(えらこきゅう)運動です。 吸啜運動(お乳を吸う運動)は、原始時代のサメが口とエラから、エサと水の中の酸素を取り込む運動が、赤ちゃんに受け継がれたものです。 喉頭蓋(こうとうがい)と口蓋垂(こうがいすい)が立体的に繋がっている赤ちゃんは、お乳を吸う吸啜を行いながら鼻呼吸ができます。赤ちゃんがお乳を吸う姿は、サメがエサの摂食とエラの呼吸を同時に行っている姿が変化したものです。進化の視点から、ヒトしてスタートする赤ちゃん吸啜の重要性が理解できます。 咀嚼運動の源もまた吸啜運動と同じく、口とエラをパクパクさせた鰓呼吸(えらこきゅう)運動にあります。お乳を吸う舌筋、咀嚼(そしゃく)をする咀嚼筋、物を飲み込む嚥下筋(えんげきん)はすべてサメのエラ呼吸筋に由来しています。赤ちゃんが成長すれば、吸啜運動(きゅうてつ)は咀嚼運動と嚥下運動に引き継がれます。つまり、お乳を吸う吸啜、食べ物をすり潰す咀嚼、飲み込む嚥下、これらすべての源はエラ呼吸筋による運動です。 吸啜や咀嚼によって顎や舌を動かす咀嚼筋が発達すると、これらを司る脳が飛躍的に活性化するとともに、心臓と横隔膜と肺をも活発化します。これは舌と顎を動かす神経と横隔膜神経が、首のあたりにある「頸部神経叢(けいぶしんけいそう)」で繋がっているためです。 鼻呼吸とともに行われる吸啜反射運動(口の周りに乳首を感じると本能的に吸いつくこと)で、舌と頬と口唇がリズミカルにモグモグ運動をすると、脳が活性化し、赤ちゃんの脳の言語中枢がことのほか発達します。脳は筋肉を動かす司令塔ですが、同時に筋肉を使えば脳も活性化します。脳と筋肉の働きは互いに持ちつ持たれつの共役関係にあります。 ヒトの進化をサメに遡ると、胎児における舌・心臓・横隔膜・筋肉などの由来が確認できます。 時間の経過とともに進化する過程を系統発生(図A:サメ)と個体発生(図B:ヒトの胎児)でご確認ください。 多くのお母様方は、歯が生え硬い食べ物を与えるとよく噛む子に育つと勘違いをされています。 吸啜をしっかりリズミカルに無意識にできるようになれば2歳半ぐらいになって臼歯まで生え揃った時に、心臓も強くなり、初めて食べ物を吸啜の延長としてモグモグと咀嚼することが可能となります。一定期間モグモグ運動をしたら、自然にお乳を呑み込むように、食べ物を呑み込むことができるようになるのです。心臓までも丈夫に育てるのが吸啜運動です。 これが咀嚼の始まりで、吸啜からやがて乳臼歯が生え揃った頃に徐々に咀嚼に移行していきます。 ヒトも哺乳動物の一員であるとの視点を育児に加え、本能に基づいた育児をすれば、よく噛む子を育てることができます。
「赤ちゃんの舌は心臓や肺や脳にもつながっている」
第17回 “よく噛む子にするために その1” お母さんの間では、離乳や断乳は早いほど良いという考えが主流のようです。しかしながら、母乳はバランスの良い栄養源であり、病原菌などから赤ちゃんを守り(受動免疫・母子免疫)、加えてお乳を吸う吸啜運動はよく噛む子を育てます。よく噛むことは脳の血流がよくなることが知られており、利発な賢い頭脳を持つ子へと発育させます。 「離乳食が遅かったのでよく噛まない子になった」といわれることがありますが、これは全く反対で、よく噛めないのは、離乳食の開始が早く、お乳や乳児用ミルクを吸う吸啜を十分行わなかったことが原因です。 早期の離乳食の開始は、吸啜の本能を圧殺し、丸呑みと口呼吸を助長させます。今の育児医学ではこれをゴックン期と呼び、成長の目安としていますが、これは全く吸啜の重要性を無視しており間違っています。 お乳を吸うことつまり吸啜は、赤ちゃんがお母さんの乳房に口唇と顎で吸いつき、舌で吸引しながら蠕動(ぜんどう)運動してお乳を絞り出すことです。哺乳期の赤ちゃんの口蓋(上顎の天井)には乳首がぴったりと収まる乳窩(にゅうか)という陥凹部(へこみ)があり、そこまで吸い込まれた乳房を舌で下から絞るようにするのが母乳吸啜運動です。この母乳吸啜運動は、生後6か月ごろまでは本能といわれる反射行動で、口の周りに乳首を感じると本能的に吸い付いてきます。 この本能を利用すれば、簡単におしゃぶりを使うことができるようになります 喉頭蓋と口蓋垂が立体的に繋がっている赤ちゃんは、お乳を吸う吸啜を行いながら鼻呼吸ができます。吸啜を行いながら、鼻呼吸と咀嚼を学習しているわけです。 こうして鼻呼吸と吸啜が一体となったお乳を吸う運動は、乳臼歯が生え揃う頃には、鼻呼吸が身についているので口を閉じて食べ物を十分に噛むことができる咀嚼(そしゃく)運動へとスムースに移行できます。 母乳を飲んでいる赤ちゃんの舌と顎の動きは、成長すると蠕動運動に近い咀嚼運動となります。そして十分に噛み砕いた後は、口を閉じて口腔内が陰圧になると嚥下(えんげ)ができます。 時折、「離乳食が遅いため物が呑み込めない」といわれることがありますが、これも誤りです。赤ちゃんは生まれながらにしてお乳を飲み込むことができます。吸啜が十分でない場合には、口を閉じる習慣が身につかず、嚥下をする時に口が閉じられません。すると口の中は陰圧にならないために、食べ物が呑み込めなくなるのです。
「吸啜(きゅうてつ)は噛むための第一歩」
第16回 “母乳が赤ちゃんにとってベストな理由” 哺乳とは授乳とも言い、赤ちゃんにお乳を飲ませて育てることです。その名の通り、哺乳類の大きな特徴は哺乳(授乳)で、授乳期間は種によって厳密に決まっています。人では2歳半(アボリジニー<原住民>は3歳)、ゴリラは4歳、チンパンジーは5歳までです。つまり、栄養学的にはその期間は母乳のみで十分に育つことを意味しています。ただしその母乳はよい母乳でなければいけません。 赤ちゃんは母親から2つのプレゼントを貰うといわれています。 2つ目のプレゼントは初乳はじめとする母乳です。 母乳育児のメリットは風邪、中耳炎、小児白血病など感染症や喘息をはじめとするアレルギーマーチのリスクの低下が広く知られています。 また、胎児の脳の完成が受胎後30日のため、お母さんのお腹の中で言葉の学習をしているという有名な研究報告がヨーロッパにあります。生後1週間で言葉を理解できるようになるそうです。授乳の際の語りかけと愛情交換などのコミュニケーションが赤ちゃんの脳の発達と精神の安定につながります。 母乳には成長に必要なカゼインや栄養とともに免疫物質が含まれており、同時にお乳を与える際の母子のコミュニケーションは順調に育っていくためのお母さんからの最高のプレゼントです。母乳の果たす役割は絶大なものがあります。母乳育児は①栄養、②免疫、③精神から考えてベストなわけです。 人は哺乳類の一員です。お乳で子供を育てるという哺乳類の決まりに従い、病気知らずの子育てをしましょう。
「良い母乳はお母さんからのプレゼント」
その1つが、母親のお腹にいる胎児期に臍の緒を通して受け取る栄養と母子免疫(受動免疫)です。お母さんと同じ量の免疫抗体を持っているといわれており、生まれた後も暫くは細菌やウィルス感染から身を守ることができます。
母乳は赤ちゃんの成長に必要なタンパク質(カゼイン)、糖、ミネラルなど完全な栄養と抗体を含んでいます。
この抗体により、呼吸・食事・排せつ時などに体内に侵入してくる細菌やウィルスから未熟な赤ちゃんでも体を守ることができます。
第15回 “乳児用ミルク育児を母乳育児に近づけるために”
「乳児用ミルクを工夫しよう」
西原育児は本能と伝承に基づいた子育てをお勧めしています。本能に基づいた子育ての一つが母乳育児あり、乳児用ミルク育児も母乳と同様にするためには温度、出方、与え方を工夫しなければいけません。
- 温度
・最初から最後まで、母乳と同じ40-41度を保つ
・ミルク量が多かったり季節・地域により冷える場合は2本に分け1本は湯煎にしておく
・ポットカバーも有効
・温度の確認は料理用温度計で確認をする - 出方
・母乳のように出にくい乳首を選ぶ
・劣化し穴が大きくなっていないか常に確認をする - 飲ませ方
・必ず抱っこし、左と右で抱きかかえて飲ませる
決して、赤ちゃんに哺乳瓶を持たせゴロンと寝かせたままで、ミルクを与えないで下さい。乳首が大きかったり、劣化して大量にミルクが出ると赤ちゃんは満腹中枢が満たされることがなく、いくらでも飲みます。赤ちゃんのミルクの『一気のみ』です。その結果、「大人しく手のかからない(体重だけは)優良児」に育ちます。その上、ミルクの温度が低ければ、腸内環境が悪玉菌優位になり、お通じの不調につながります。母乳育児と同等にするにはお母さんの体温を感じ、表情を見て、舌をぐいぐい使って十分な吸啜が必要です。この吸啜は言語中枢を刺激し言葉の獲得につながります。この時期に吸啜を十分行わないと、言葉の習得ができない子になりますから、くれぐれも注意が必要です。
母乳のため哺乳瓶をくわえないというお尋ねはよくありますが、以下をお試しください。
- お腹がすいている時に哺乳瓶で与える
- 哺乳瓶の乳首をいろいろ試す
メーカーにより感触が異なるため好みのものを探す - 動機付けのため、乳首に砂糖やオリゴ糖など甘みのものを少量塗る
- いろいろなミルクをためす
- お母さんや兄姉が使って見せる
成長とともに真似をしたがる
乳児用ミルクは母乳に準じた消化・吸収の良い総合栄養食です。乳児として完成するまでは母乳の延長で与え、幼児として完成する5歳程度までは体重増加が思わしくないなど、不調時に栄養の補助としてお勧めしています。
第14回 “乳児用ミルクは母乳同様のバランスの良い栄養食”
「乳児用ミルクは母乳の延長で与えましょう」
「“西原先生は母乳がベスト、不足分を乳児用ミルクで補えばよい”と言われますが、母乳が出ない場合はどうすれば?」とよく質問があります。一般的な育児法では離乳食を食べている1歳の赤ちゃんでも、乳児用ミルクを中心に子育てをしているお母さんは、西原式育児では大勢いらっしゃいます。
母親の健康上の問題・第2子を希望・仕事の復帰などのため母乳を断乳した方、あるいはアトピーなどアレルギーマーチのため離乳食をやめ乳児用ミルク中心にしたお子さんなどです。
母乳が十分でなかったり、様々な理由で断乳した場合に、多くのお母さん方が不安になるのが、乳児用ミルクの使用です。乳児用ミルクは母乳の代替ですから、温度や出方など母乳に準じた与え方をすれば、全く成分が母乳と同じではありませんが、母乳育児と同等と考えられます。乳児用ミルクは、正しく使えば母乳育児と遜色はありません。
乳児用ミルクには添加物や成分の偏りがあるのではといわれます。しかし乳児用ミルクには、いわゆる防腐剤や着色料などの添加物は入っておらず、強化されているビタミンなどは栄養素です。成分も母乳に近づけてあり、大変バランスの良い、消化吸収の効率の良い栄養食です。
一時、中国の粗悪なミルクで赤ちゃんの健康被害が出ましたが、日本をはじめとする先進国のものは大変よくできています。
またミルクアレルギーに対応して、アレルギー予防用・疾患用・完全に合成アミノ酸のみのエレメンタルホーミュラーがあります。これらを正しく使えば、赤ちゃんにミルクアレルギーがあっても対処が可能です。
乳児ボツリヌス症事件で赤ちゃんの腸の性質が明らかとなったことで、分子量の大きいタンパク質がパイエル板を通して吸収され、アトピーなどアレルギーマーチの原因となっていることが理解できます。赤ちゃんの胃の消化酵素は母乳のカゼインしか消化しないため、それに準じたアミノ酸でなくてはいけません。
乳児用ミルクにしたら、便秘や下痢・緑便・アトピーなど不調になったといわれることがありますが、乳児用ミルクそのものに問題があるのではなく、ミルクの温度が不適当、乳首の交換をしないため劣化し穴が大きくなりミルクが早く出過ぎるなどの原因があります。ミルクが早く出過ぎれば、胃に留まらず胃のわきの小弯から一気に腸に流れ込みます。
母乳では左右の乳房で授乳しますが、ミルクの場合も左右交互に抱きかかえて与える必要があります。一方のみの授乳は、子供の体の偏りにつながります。
ミルクアレルギーでないのであれば、グリコのアイクレオは、赤ちゃんにとって美味しいらしく、お勧めします。乳児用ミルクも脂質など原料の由来が違えば、赤ちゃんにとっては味が大きく異なるようです。好みのものを探し、母乳の延長と考え最初から最後まで温度は40-41度、母乳のように出にくい乳首で与えてください。
乳児用ミルク育児も、ミルクの選び方・与え方で、母乳育児と同等になります。
第13回 “日和見(ひよりみ)感染症にかかったら”
「日和見感染―その対処法」
1. 発熱
体温が39°以下の時はどこも冷やさず、39°以上になれば、水道水で濡らしたタオルで額を冷やします。額を冷やすのは熱に弱い脳を保護するたです。それ以上あがる様子が見られれば、同じく濡れタオルで脇の下を冷やしましょう。冷やすのは、通常の体温に下げるのみで、冷やしすぎは厳禁です。白血球がバイ菌を退治している時に熱が出るのであり、氷枕やアイスノンなどで急激に冷やすと、免疫力(白血球がバイ菌やウィルスを消化する力)が低下し、体中にバイ菌(腸内の常在菌=日和見菌)が蔓延し治りがさらに遅くなります。打撲や火傷でない限り、冷やしてはいけません。
脱水症状にならないよう、温かいお白湯で水分補給をしましょう。腸が冷えるため食べ物の消化吸収も悪くなり、タンパク質を含むアイスクリームも厳禁です。
多くの先生はこの考えがないためアイスクリームを勧められます。お母さんが正しく対処する必要があります。
2. 下痢
体を温かく保ち、尿の色と量を見て温かい白湯で水分補給を十分に行います。下痢の時はお腹やお尻、手足が冷たいことが多く、確認をした上で温める必要があります。手や足が冷たいと肺と腸がダメージを受けます。手・足や体表の皮膚と内臓は毛細血管に分布する自律神経で繋がっているからです。
床暖房であれば問題ありませんが、洋間のフローリングに、直接マットレス等の寝具を敷いて寝るのは冷えるので避けましょう。床材が寝るには適しておらず、また、通気のためドアの下が開いており冷気が床の表層に滞留します。
3. 咳・鼻づまりなどの風邪症状
室温と湿度を確認しましょう。喉の扁桃、気管、気管支や肺は乾燥と低温に弱いため、室温を25°に 湿度を60%に保つとお子さんは楽になります。鼻詰まりは応急的に鼻吸い器を使用したり、電子レンジで温かい蒸しタオル を作り、鼻を温めると通ってきます。また、母乳点滴も有効です。
口呼吸は風邪のみならず、万病の最大の原因です。日頃から鼻呼吸を心掛けると、鼻から空気が入ることで加湿・加温・除菌が行われ日和見感染を防ぐことができます。
通常、病院を受診すると気管支拡張剤や抗ヒスタミン、抗アレルギー剤が処方されますが、対処薬のため症状をおさえるのみです。治ったと勘違いし、再発する場合がほとんどで、こじれて中耳炎、滲出性中耳炎、膀胱炎を発症するケースも多くみられます。
4. 嘔吐
鶏のスープなどで栄養をつけたがるお母さんがいらっしゃいますが、スープには動物タンパク質がふくまれているので2歳半までの赤ちゃんには全く適しません。詳しくは「食品成分表」女子栄養大学出版部を参考ください。
温かい白湯で水分補給を行い、胃が受け付けるのであれば母乳やミルクを与えましょう。栄養面は症状が回復すればカバーできます。嘔吐したのでは意味がありません。
<アイスクリームがよくない理由>
アイスクリームは栄養があるとされ、子供も大変好むので与えるお母さんが多くいらっしゃいます。しかしながら、この栄養は赤ちゃんには毒となるタンパク質が多く含まれています。アメリカで起こった小児ボツリヌス症事件(生の蜂蜜を与えられた赤ちゃんが、ミツバチの足についていたボツリヌス菌入りの蜂蜜で大勢死亡した)で、赤ちゃんの腸の性質が解明されました。赤ちゃんに不用意にアイスクリームを与えると、腸は直ちに大人型の悪玉菌ばかりとなります。赤ちゃんの腸はこれら悪玉菌をすべてパイエル板から白血球に取り込むため、悪玉菌が体中にばらまかれてアトピーなどのアレルギーマーチの引き金となります。つまり、アイスクリームを与えると腸管が冷えるため働きが悪くなるとともに、腸内の常在性のバイ菌やウィルス、すなわち悪玉菌が白血球に吸収されます。その汚れた白血球を含んだ血液が体中を巡り、それらがばらまかれ、さらなる日和見感染症を引き起こします。その結果、体力を消耗させ、回復の妨げになるので不調時のアイスクリームは絶対に厳禁です。
かかりつけ医に勧められてもくれぐれも要注意を!
<嘔吐で汚れた衣類や寝具について>
衣類は汚物を取り除き、洗剤と除菌効果のある漂白剤で洗い、雑菌が繁殖しないようにする。常在菌のため、消毒の必要はありません。
寝具は汚物を取り除き、洗えない場合は、天日干しを十分しましょう。
<ヤングについて>
当赤ちゃん相談室では、日和見感染の際はヤング(YOUNG)の服用を特にお勧めし、効果が上がっています。ヤングは、腸を整えるとともに抗菌作用・抗ウィルス作用があり、死菌のため赤ちゃんも安全にも使用できます。
◆ 西原博士の美呼吸健康術サイト「ヤング (YOUNG)」商品ページはこちらから。
第12回 “子供の主治医はお母さん”
「日和見(ひよりみ)感染症かウィルス感染症か見極めよう」
「急に熱が出た」「下痢になった」「食べたものを吐いた」「風邪を引いた」といった場合、すぐに病院に行くのではなく、子供の状態を見極め、正しく対処しましょう。子供の主治医はお母さんです。
寝冷えに起因した常在性の腸内細菌※による発熱・下痢・風邪症状か、あるいは病原性のあるウィルス感染によるものかにより、症状も対処法も違ってきます。
人は赤ちゃんから大人まで、口や喉、腸の中に殆ど病原性のないバイ菌をたくさん持っており、免疫力が勝っていれば常在菌では発症しません。常在菌とは、通常は病気を起こさない腸内細菌群のことです。免疫力、つまり白血球が弱って常在菌を消化できない場合に発症するのが日和見(ひよりみ)感染症です。昔は子供では自家中毒症ともいわれました。日和見(ひよりみ)感染による発熱・下痢・嘔吐・風邪症状であれば、消化吸収の良いものを与えて、温水(湯)を十分に補給して、暖かくして自宅で安静にすれば回復します。特に寒い時期に、症状が軽度にもかかわらず病院を受診すると、「寒さ、長い待ち時間、緊張」などでかえって症状が悪化することがあります。病院は病気の巣です。その上、処方されるのはほとんどが解熱剤、座薬、下痢止め、抗アレルギー・抗ヒスタミン剤、気管支拡張剤、去痰剤など対症療法薬です。
病原性のあるウィルス感染の場合は、適切な対応が重要です。39度以上の熱が2日間以上続き、発疹、水様性の便や嘔吐の繰り返しがあれば、ウィルス感染を疑う必要があります。このような時にも、アイスクリームを与えることは厳禁です。
赤ちゃんの不調は、家族の行事に付き合わされる時期に集中しています。兄弟・姉妹の保育園や幼稚園での行事が多い時、年末年始、夏休みなどです。赤ちゃんといえども疲労のため免疫力が低下します。当方にお問い合わせの発熱・下痢・嘔吐・風邪症状のほとんどが、無害の常在菌による日和見(ひよりみ)感染で、西原育児の対処法で改善しています。
ぜひお母さんが主治医となって日和見(ひよりみ)感染症(自家中毒症)に正しく対処ください。
次回は日和見(ひよりみ)感染症の対処法についてご紹介します。
※腸内細菌とは口・鼻・喉・気管・胃腸・泌尿生殖器内の細菌の総称
第11回 “上向き寝を習慣づけよう”
「横向き寝・うつぶせ寝は口呼吸、顔・歯形・体の歪みの原因」
人が生きるには呼吸・栄養・睡眠が必須ですが、大半を寝て過ごす赤ちゃんにとって睡眠、特に睡眠姿勢は非常に大切です。たかが寝相と侮ると、一生の不調につながります。自由に手・足をバタバタ動かせる上向き寝は、しっかりした肺呼吸も身に着けます。
横向き寝・うつぶせ寝には以下のような弊害があります。
- 鼻づまり→口呼吸
下側の鼻腔内の静脈がうっ血して鼻づまりになり、苦しくて口呼吸になる - 顔のつぶれ→顔の変形
頭の重さが顔にかかりつぶれる - 体の歪み→まっすぐに歩けなくなる
猫背、脊柱側弯、骨盤のゆがみ、がに股 - 歯形の歪み
出っ歯、反っ歯、受け口、乱杭歯、反対咬合
鼻が押しつぶされ、鼻柱隔側弯にもなる - 近視の原因
横向き寝は、決まった側を下にして寝るため、眼窩(眼の周りの骨)が楕円形につぶれるため、近視になる - 乳幼児の突然死の原因
呼気に含まれる炭酸ガスは、窒素を多く含む空気より重いため、うつぶせ寝をしている赤ちゃんの鼻の周囲に炭酸ガスが溜り、窒息状態となる。
乳児の形をした中が空洞の模型を作って肺の位置にウサギを入れておくと、赤ちゃんがうつ伏せ寝の状態では全部死んでしまいますが、上向き寝ではすべて生存するというアメリカの実験がある。これは人では、鼻孔がうつ伏せ寝で最も下になるため、炭酸ガスが溜りこれにより乳児の突然死がおこる。 - 呼吸が抑制される。
うつぶせ寝では手と足が動きにくくなるため、呼吸が抑制される。脊椎動物の進化で、後に心臓と肺になるエラも、手と足になる胸ビレと腹ビレもともに外呼吸器官で、発生学的には同じ役目を担っている。手と足をよく動かすと、心臓も肺も活発に動くのは、原始型でともに呼吸を司ったことによる。
上向き寝のできない場合は、以下の点の改善を図りましょう。
- 食べすぎや食べ物の不適当でお腹が苦しい→離乳食の見直しとお通じの確認
就寝前に食べすぎない、また、食後十分時間を空けて寝る - 過緊張→何事もリラックスできる範囲で
長時間の散歩や早期の習い事による疲れなどに注意 - 寝具が固い→柔らかいものにする
うつ伏せになると柔らかい寝具は危険との思い込みのため、硬い寝具を選びがちですが、赤ちゃんは脂肪優位のため、柔らかいものにすると上向き寝で寝やすい。 - 指しゃぶり→おしゃぶりの使用
しゃぶる方の手が利き腕となり、筋肉が引っ張られて利き腕側に、横向き寝になるため、おしゃぶりを正しく使わせる - 体の歪みがある→両手を均等に使わせる
- 片噛み→両方の歯でよく噛ませる(体の歪みが取れる)
- 寒い→特に延髄(首の後ろ)を温かく保つ
勿論、一晩中真上を向いて寝ることは無理であり、必要もありませんが、基本的には上向きで、両肩が寝具についた状態で、漢字の「小」の字で寝ましょう。歯が生えそろったばかりのお子さんが「歯ぎしり」をしたり、一晩中ごろごろしている場合は、必ず原因がありますから、弊害の大きさを考え、改善が必要です。月齢が低い場合は「雛まき」もお勧めです。また、西原先生の『寝相矯正体操』や『ダウンふわふわ枕』の使用も上向き寝への改善に役立ちます。
悪い寝相は筋肉の歪みにつながるため改めるのが難しく、赤ちゃんの時から正しい上向き寝を身につけましょう。
第10回 “受胎後32日から38日までの6日間が大事”
「個体発生は系統発生を繰り返す」※
受胎後32日から38日までの6日間は、体の冷え、口呼吸、冷たい食事・飲み物の摂取など習慣の見直しと、過労、寝不足、過度のスポーツ、飲酒をはじめとする日常生活、薬の服用に特に注意をする必要があります。
赤ちゃん相談室への奇形の問い合わせは、腎臓、心臓、ヘルニアなどの内臓奇形、兎唇・口蓋裂、難聴、視力障害、生歯の欠損症などが多くあります。これらの奇形は、妊娠初期の魚型胎児(エンブリオ)から哺乳動物型の胎児(フィータス=人型胎児)に変容する期間に、胎児が母親からへその緒を通してダメッジ(酸素不足や冷えなど)を受けることで生じます。つまり、受胎後32日から38日までが魚型から人型に変わる大変不安定な期間で、胎児が障害を受けやすいのです。
この6日間は、系統発生ではデボン紀に相当し、我々の先祖である原始脊椎動物のサメが、水中から陸に上がる時期に相当します。水中で浮力の中で生きていたサメが、重力のある地上で呼吸し餌を食べ、生殖・出産をするシステムへと変容した期間です。動物の進化の歴史の中で、6000万年間をかけた上陸劇が、ヒトの胎児では32日目から38日目までの6日間で再現されるのですから大変劇的です。
胎児にある器官ができる時に、母体と胎児に極端な酸素不足が起こると、その器官に奇形が生じることがあります。よく知られている兎唇口蓋裂は、遺伝もありますが、唇と口蓋ができる時の酸素不足で起きることもあります。また、妊娠初期の歯科治療では、麻酔剤の血管収縮剤による胎児への影響を注意する必要があります。
受胎して38日以降は哺乳動物へと変容し、その後おおよそ242日間母胎の中で育ち、産み落とされてから、24歳すぎまでは進化を続け、24歳で人として完成するといわれています。
妊娠から出産の過程は、お腹の中で、5億年の進化の道のりを赤ちゃんが再現していることを十分自覚し、奇形の生じやすい魚型胎児から哺乳動物型の胎児(フィータス=人型胎児)へと変容する32日目から38日目の6日間は特に大事に過ごしましょう。
※「個体発生は系統発生を繰り返す」ドイツのヘッケルが提唱した。
個体発生:1つの個体が、受精卵から生まれるまで(出産されるまで)の過程
系統発生:1つの動物種が、変容した次の種に進化する変化の過程の全容
第9回 “三つ子の腸は一生涯”
「便秘の解消」
「三つ子の魂百までも」といわれるように、この頃に培われた心や健康は生涯続きます。「三つ子の腸も百までも」です。
通常3日までは便秘とは言われませんが、乳児の場合、水分の多い母乳やミルクであれば毎日数回、黄色で、炊き立てのご飯のような匂いのお通じが理想です。
便秘の場合すぐに下剤や浣腸に頼るのではなく、原因となる以下の点を確認しましょう。腸の刺激(ラキソベロン)や水分を保持する(水酸化マグネシウム)ことで排便を促すのは、赤ちゃんにとっては良くありません。自分の持っているビフィズス菌を増やすことで、スムースな排便につなげましょう。
【便秘の原因】
- 食べる総量が少ない
- 冷えで腸がよく働かない→腹巻が有効
- 食べ物が不適当である(質の悪い母乳と早すぎる離乳食)
- 過緊張(過度の刺激)←長時間の散歩やドライブ
- 口呼吸のため低体温→おしゃぶりを使って口閉じのトレーニングを
解消法としては、先ず、①十分食べているかを確認し、不足の場合は乳児用ミルクや重湯、おかゆなど月齢に応じたものを補い、離乳食が進んでいるのであれば、十分噛ませます。②口呼吸と低体温の防止、脳の活性化のためにおしゃぶりを必ず使います。皮膚と内臓が交感神経で繋がっているため、手・足・お腹を常に温かく保てば腸がよく働くようになります。③衣類に注意し、入浴はたっぷりのお湯で十分温め、④入浴後は腸がよく働くようお腹を腸の巻いている方向に「の」の字のマッサージを行い、⑤上向き寝で足をバタバタ動かす自転車こぎ運動やハイハイで腸の働きを助けます。手足を十分動かすと腸の働きが良くなり、快便になります。
乳児の便秘は、便のもとになる食べ物の量が適度で腸の働きがよければ解消します。排便は腸のバロメーターで、「三つ子の魂は百までも」の通り、この時期培われた腸は健康の基本です。
自力排便の難しい場合は、母様が、赤ちゃん用の浣腸を湯煎で人肌に温めて使うことをお勧めします。うっかり便秘で病院にいくと「腸洗浄」までされ、大事な腸の有用菌まで出されてしまうこともあるので要注意です。
また、予防接種は便秘、緑便、下痢などお通じの不調の原因となるため、必ず体調の良いときに受けましょう。
どうしても便秘が解消しない場合は、ヤングなどのビフィズス因子の服用で、自身の有用菌を増やす赤ちゃんに適した方法を選びましょう。
第8回 “ハイハイは健やか育児のかなめ”
「立っちと初めの一歩は血圧が十分上がってから」
お腹の中にいる赤ちゃんの血圧は、水中にいるサメと同じ15mm水銀柱です。そしてほぼ10月10日で生まれる赤ちゃんの血圧は、30mm水銀柱です。ハイハイで頸胴を鍛えて、血圧が60mmになり自然に立ち上がり歩くのを見守りましょう。
赤ちゃんが生れ落ちると、まずお乳を飲み手足をバタバタ動かします。このお乳を吸う吸啜運動や呼吸筋肉全体が刺激される手足を動かす運動は、心臓を活発化し、これにより徐々に血圧が上がってきます。血圧が上がることでますます動きが活発になり、ズリバイ、ハイハイ、タカバイをするようになります。ハイハイのためにうつ伏せになり首を持ち上げると、首の横の頸動脈部にある頸胴が刺激され血圧が上昇するとともに、血圧をコントロールする頸胴の機能が強化されます。このようにして赤ちゃんの血圧が60mm水銀柱に達っした時はじめて、立っちをし歩き始めることができます。
離乳食を早く開始し筋肉を鍛えれば早く歩くのではありません。筋肉ムキムキの赤ちゃんでも、血圧が60mm以下であれば、立つことも歩くこともできないのです。
最近では周りに家具などがあり早くからつかまり立ちをしたり、早く歩かせたい両親の意向もあり、十分に血圧が上がらないまま歩き始める赤ちゃんが多くなっています。ハイハイを省略したり十分行わず成長すると、頸胴の血圧調整機能が十分働かないため、すぐに貧血を起こしたりする傾向があります。人は哺乳動物の頂点に位置はしていますが、他の哺乳類と同様に4足歩行の期間をしっかり持つ必要があります。
ハイハイを十分行い、頸動を刺激し血圧を60mmに高めてから自然に歩かせるようにし、立っちや歩行は無理に行わせないようにしましょう。
ハイハイはおしゃぶりとともに、生涯にわたる循環系の健康の基礎となります。
第7回 “夜中の授乳の歯のケア”ー 濡れガーゼ・濡れタオル清掃を
「虫歯にならないために」
西原式育児は、「母乳が一番、欲しがる時に欲しがるだけ」が基本です。
赤ちゃんは、約6か月で歯が生え始め、2歳半で乳臼歯まで生えそろい、乳歯列が完成します。
夜中に空腹で目を覚ました場合、授乳をすると虫歯が心配、また、そのたびに歯磨きをするのは大変といわれます。夜中の歯磨きは、赤ちゃんにとっても大迷惑です。
と言って多めに授乳をすると、お腹が苦しいらしくゴロゴロ転がり寝つきが悪くなります。
歯が生えてきても、夜中のミルクは欲しがれば与えても、正しく対応をすれば虫歯の心配はありません。清潔なガーゼやタオルを10cm四方に切っておき、それを濡らし軽く絞り、指に巻き歯や口の中を拭き、使い捨てにすると便利です。最後に、お白湯(暖かいもの)を少し飲ませるとなお良いでしょう。
夜中用には、清潔な蓋つきの容器(ガラス瓶など)に濡らしたガーゼやタオルを入れ、枕元に置いておくことをお勧めします。
日中でも月齢が低い場合は、濡れガーゼ・濡れタオル清掃で十分です。2歳半ごろになり乳歯列が完成のころまでに、歯ブラシの歯磨き習慣を身に着けてください。お子さん自身による歯ブラシ清掃とともに、お母様によるガーゼやタオルの歯磨きを合わせてお勧めします。
濡れガーゼ・濡れタオル清掃は大変良く歯の汚れを取るため、大人にも大変有効です。歯ブラシ清掃とともに習慣づけください。
第6回 “金太郎さんの腹あて” ー 5分間ソーイング
「おなかを冷やさないために」
冷房の効きすぎや寝冷えから、赤ちゃんのお腹を守りましょう。最近ではあまり見かけませんが、かつては夏でも「金太郎さんの腹あて」と呼ばれた四角な腹あてで、お腹を冷やさない工夫をしていました。筒状の腹巻は、特に夏には、背中に汗をかきやすいため、胃と腸を冷やさない金太郎さんの腹あてが最適です。
手軽に作れて、汗をかけば簡単に取り換えることができます。
〈材料〉
1.正方形のハンドタオル 月齢に合わせて小・中・大(1辺約・23cmから33cm)
2.ソフトテープ 体格に合わせて適宜 太さ 2mmから5mm
〈ポイント〉
*お腹のひもは、背中が痛くならないように、片方で結びます。
*使用時は、首は絞めつけないよう注意しましょう。
第5回 “赤ちゃんの体温が高いわけ”ー冬眠中のクマさんと同じ!
「赤ちゃんは常に温かく育てましょう」
「熱がこもる」「自律神経の発達のため、冷たくしなければいけない」「ひ弱になる」などの理由で、赤ちゃんを冷たく育てるのが主流のようです。しかしながら、赤ちゃんの体温が高いのにはわけがあります。
赤ちゃんは約3000gで生まれて、1歳でほぼ2倍半の8000gになります。これは平均して1日に14gの体重増加です。細胞にすると3兆個が8兆個に増えるため、1日に140億個、1時間では6億個、1分間で1000万個の細胞が分裂・増殖する計算になります。このように多数の細胞分裂を繰り返して成長するために、エネルギー代謝が大人と比べて格段に活発です。大人の平均より、赤ちゃんの平均体温が36.5から37.5度と高いのは、成長に必要な熱のためです。
呼吸には肺呼吸と細胞呼吸があります。人が活動できるのは、究極では細胞内のミトコンドリアが酸素やピルビン酸、ビタミン、ミネラルなどを使って行う細胞呼吸によって作られるエネルギー(ATP)のおかげです。赤ちゃんの成長のための細胞分裂には、ミトコンドリアが生産するこのエネルギーが必須です。ミトコンドリアは、37度から38度で活性化する温度依存性があます。つまりこの程度の体温がないと、ミトコンドリアが十分なエネルギーを作らないため順調な赤ちゃんの発育はありません。
ミトコンドリアの働きをよくするには、体温を高く保つために熱が必要です。その熱を作る専用のブラウンファット(褐色脂肪細胞)が、赤ちゃんとクマなど冬眠する哺乳動物にあります。冬眠中のクマが、何か月も食べ物なしで寒い冬を乗り切ることができるのは、このブラウンファットのおかげです。
成長の細胞分裂をする際に必要な熱のため赤ちゃんの体温はいつも高く、また、自律神経の交感神経が未発達のため、体温調節が上手おこなえず、熱いと汗をかきます。それをすぐに、熱がこもると寒くしたり、冷たく育てるとミトコンドリアが阻害され、成長の妨げとなり、しいてはアレルギーマーチの引き金の1つとなります。
つまり、赤ちゃんの成長すなわち細胞分裂は、細胞呼吸を担うミトコンドリアが37度から38度で活性化する温度依存性があるため、赤ちゃんは温かく育てなければならないのです。赤ちゃんは新陳代謝が活発で、体内で作り出される熱が多いため、体温が大人より高めとなっています。
常に、足や手、お腹やお尻をさわってポカポカ温かいか確認をしましょう。
第4回 “体温の差で健康状態の把握を”
「起床直後と日中安静時の体温の差を確認しましょう」
お子さんが、どうしても鼻呼吸ができないと言われることがあります。高熱・発疹・下痢などがあれば病気を心配しますが、寝冷えや軽度の鼻風邪が見過ごされて、鼻が詰まっている場合が多くあります。寝冷えや鼻風邪症状を見逃し、腸炎や中耳炎、本格的な風邪など重症に陥ることもあります。
また軽度の症状で病院を受診し、逆に風邪をもらってくるなどのケースも見られます。
赤ちゃんの健康状態のバロメータには、体温・食欲・排便・ご機嫌・皮膚状態などがあります。
個人差はありますが乳児の平熱は36.5度から37.5度です。起床直後はその平熱より0.5度から1度くらい低ければ、寝冷えや鼻風邪ではありません。日中安静時の体温は起床時よりも0.5度から1度くらい高めになっています。日中に起床直後より低いか、あるいは同じであれは寝冷えや鼻風邪が考えられます。
体温は数字のため分かりやく、赤ちゃんの健康管理に利用しましょう。
先ずは起床直後と日中安静時の体温を測り、その後は赤ちゃんを抱いた際の体温の感覚で健康状態を把握しましょう。
第3回 “おしゃぶりの効用”
「1.脳の血流を促し言葉の習得と、2.鼻呼吸にして嚥下の促進、3.顎骨の発達で永久歯への備えを」
口が塞がるのでしゃべれなくなる、舌の使い方が分からず物が飲み込めなくなる(嚥下(エンゲ)能力が身につかない)と、おしゃぶりを嫌うお母様がいらっしゃいますが、これは大いなる誤解であり、赤ちゃんの最も大切な本能であるお乳を吸う吸啜(キュウテツ)(舌筋と口唇頬筋の連動)を助けるのがおしゃぶりです。ここで正しくその効用を確認しましょう。
1.おしゃぶりを使うことで、吸啜と口と舌の蠕動(ゼンドウ)運動(もぐもぐ運動)が促され、脳の血流がよくなり、将来、言葉を司る大脳皮質の言語野が発達し、同時に舌の動きが滑らかになります。これが言葉の習得につながります。言葉は舌のみでしゃべるのではなく、脳の指令で声帯と舌と唇で音を作る(構音)ものです。
2.赤ちゃんは喉頭蓋と口蓋垂が接近しており、この時期は鼻呼吸しかできません。おしゃぶりを使うことは、鼻孔の呼吸筋肉、舌筋、口輪筋を鍛え、きちっと口を閉ざして鼻呼吸にするための唯一のトレーニング方法と言えます。哺乳動物の特徴はお母さんのお乳を吸うことです。授乳時に見られる唇の閉鎖でも分かるように、口を閉じないでお乳を飲み込むことはできません。口を閉じることで口の中が陰圧になり、初めて嚥下ができます。赤ちゃんは生まれながらにして、嚥下能力を持っています。口を閉じられないお子さんは、口の中が陰圧にならず食べ物を正しく飲み込むことができません。口を開けたままで嚥下はできないため、先ずはおしゃぶりで口を閉ざし鼻呼吸を身につけましょう。
3.オシャブリや長期の授乳では乳歯はスキッ歯になりますが、これは永久歯が生えるために必要な隙間です。永久歯は乳歯のほぼ2倍あるため、乳歯列がきれいなお子さんは、永久歯が重なる叢生(らんぐい歯)となります。おしゃぶりの使用や長期の授乳で開咬になっても、鼻呼吸が身についていれば、乳臼歯が生えそろった段階で十分噛むことで、上の歯が下りてきて、解消します。開咬よりも、一度身についた口呼吸を改める方が難しく、また弊害も多く出ます。吸啜は口と舌の蠕動運動、つまりもぐもぐ運動につながるため、2歳半頃に乳臼歯が生えそろった段階で口を閉じて両方の歯で噛む咀嚼を教えれば開咬は解消します。
おしゃぶりの使用は、脳の発達が促され言葉の習得につながり、口呼吸が防止されて鼻呼吸となり、嚥下がスムースに行われ、さらに顎骨が発達するので乳歯のほぼ2倍ある永久歯がきれいに生え揃うという効用があります。そのうえ、進化の前のステージでエラの呼吸筋である舌筋と心筋が同じ由来のため、舌を動かせば心筋も強くなります。先ずは、お子さんの好みのおしゃぶりを探すことをお勧めします。
【さらに詳しく】
爬虫類は、次々と生え変わる食べ物を引き裂くための同じ形をした同形歯で、噛み砕く歯ではないため、丸呑みしかできません。哺乳動物は、歯根膜を持つ機能に応じた異形歯のため食物を噛み切り、かみ砕き、よくすりつぶすことができます。
鳥類は別ですが、爬虫類以下の動物は、ミトコンドリアの代謝(細胞呼吸)が哺乳動物の10分の1です。哺乳動物のライオンと爬虫類のワニを比較すると、ライオン1頭分のエサでライオンと同じ体重のワニ10匹を養うことができます。つまり、よく噛むか丸呑みかでミトコンドリアの代謝は10倍もの違いが出ます。
乳児と幼児を比べると、母乳や乳児用ミルクを吸う吸啜と、2歳半で歯が生え揃ってからの咀嚼では、ともに口と舌のもぐもぐ運動と鼻と肺の呼吸運動とが一体となった同じ一連の動きなのです。これはミトコンドリアの細胞呼吸のためのシステムです。つまり、吸啜と咀嚼と鼻と肺による呼吸は本来、一体のものです。吸啜と口と舌のもぐもぐ運動の蠕動運動と咀嚼は、口が塞がっているためにできることで、そのため鼻でしか呼吸ができないのです。吸啜と咀嚼はともに、元々鼻呼吸から肺呼吸につながる一体のシステムなのです。
咀嚼運動というのは、進化の初めのころの呼吸筋肉(エラの筋肉)に由来するエラ呼吸の蠕動運動を受け継いだものです。咀嚼運動と物を飲み込む嚥下とは元々一体のもので、蠕動運動の一環ですから、初めからおしゃぶりを使っていればリズミカルに吸啜から嚥下はもとより、物を食べるようになってからの咀嚼から嚥下に至るまでがスムースに行われるようになります。
第2回 “腸の成長にあった離乳食の基本”
「栄養バランスの良いミルク粥のすすめ」
哺乳類の授乳期間は種によって決まっており、ヒトの場合は2歳半ごろまでで、動物学的にそのころ乳児として完成します。アメリカで発生した乳児ボツリヌス症事件により、乳児の腸は荒いざるの目のようで、何でも吸収してしまうことが明らかになりました。
発育にはたんぱく質が必要として早期に与えると腸内細菌が大人型となり、パイエル板を通して白血球に取り込まれ、体中にばらまかれて、アトピーなどアレルギーマーチの引き金となります。
個人差はありますが2歳半ごろに乳児として完成するまでは、母乳や母乳に準じた腸の発達にあった食べ物が、月齢に応じた順調な体重増加をもたらします。つまり食べ物は消化・吸収されて初めて成長につながります。
乳児用ミルクは赤ちゃんの発育に必要な、すでに消化されたたんぱく質のペプチドやアミノ酸などが、母乳に近づけて調整されています。また、お米の澱粉は、アミラーゼで分解されてブドウ糖として吸収され、細胞内でエネルギー生産に使われます。澱粉は多くの過程を経て余ればたんぱく質や脂質として蓄積されます。これで日光浴をすれば、ビタミンDが活性化され、元気になります。乳児用ミルクは栄養バランスが良く、消化・吸収が優れていますからお粥と合わせたミルク粥を基本に、根菜類と合わせて離乳食に活用しましょう。
お粥や軟らかく煮たさつま芋・ジャガイモ・ニンジン・カボチャなどの根菜類を、乳児用ミルクと合わせるかミルクを直接入れます。ミルクは60度を超えなければビタミン類が壊れる心配はありません。味付けはしないか、ほんの少々の天然塩のみで十分です。里芋やヤマトイモなどたんぱく質分解酵素を含むイモ類は、適さないので注意が必要です。
月齢に応じミルクの濃さやお粥の硬さは調整し、ミルク粥・ミルク野菜ポタージュ・ミルク野菜粥など工夫しポッチャリ型の丸々とピカピカの赤ちゃんに育てましょう。
第1回 “離乳食の第一歩”
「哺乳瓶の乳児用ミルクに重湯を足しましょう」
西原式育児は、母乳がベストで不足分は乳児用ミルクで補うことをお勧めしています。本格的な離乳食の開始時期は個人差がありますが、第一歩として哺乳瓶の乳児用ミルクに重湯を足すといいでしょう。
赤ちゃんは2歳半ごろに乳児として完成します。それまでに重要なのは吸啜です。吸啜の舌の動きは脳の発育を促し、歯が生えてきた時には咀嚼運動に受け継がれます。さらに顎骨を育てるため、永久歯に生え変わる際に叢生が避けられ歯並びがよくなります。永久歯は乳歯の約2倍の大きさがあります。歯の生え方を考慮しつつ、母乳と同じ要領で重湯入りミルクを与えるのが離乳食の第一歩です。
10倍のお粥の重湯をスプーン1杯から哺乳瓶に入れ、月齢に応じて重湯の濃さと量を調整します。重湯の量が多くなり哺乳瓶の乳首から出なくなると、スプーンで与えますが、ズルズル飲み込むことに注意しましょう。
お米アレルギーのある場合は、米粒の周りのたんぱく質を精米機で取り除く必要があります。