西原ワールド アート医研

西原式育児体験談

母乳育児の取り組みをご紹介

1歳過ぎまで母乳で育った赤ちゃん (「すくすく通信」67号より)

 1歳過ぎまで母乳中心で育てられたお子さんは、Yちゃんといいます。Yちゃんの母・Mさんは私の育児学に賛同し、「1歳過ぎまで母乳のみで育てたい」という強い気持ちを持って育児に取り組まれました。
 Yちゃんはずっと母乳のみで育てられ、1歳2ヶ月半になって少しずつ固形食を食べるようになりましたが、1歳8ヶ月の時点でも欲しがるままに母乳を飲んでいます。そして、少しのアレルギーもなく、顔色もつやつやとして血色もよく、健康に育っています。生後8ヶ月頃からことばを話し始め、10ヶ月頃から歌をたくさんうたうようになり、1歳過ぎからはどんどんことばが増えました。ことばの発達の早い賢い子に育っているのです。
 ところで、興味深いのはこのYちゃんの成長グラフです。母乳だけで育てられた赤ちゃんは、生後4ヶ月までどんどん体重が増え、4ヶ月から6ヶ月まではわずかずつしか増えず、生後6ヶ月過ぎで体重7kgになっています。その後はゆるやかに体重増加し、1歳を過ぎて固形食を食べ始めると増加の勾配が大きくなり、1歳6ヶ月を過ぎるとまたゆるやかな体重増加となっています。この体重増加のパターンは何を語っているのでしょうか。
 「母子健康手帳」の乳児身体発育曲線のように、うなぎ登りに体重増加することが好ましいという見方からすれば、このグラフは赤ちゃんの栄養不足を語っているように思えるかもしれません。しかし、これは前述したように、4ヶ月まで肥満気味になって体重が増え貯えられてきた脂肪が、それ以後はどんどん燃焼され、体全体の働きがいっぱいに発動されてスリムに育ってきたことを表しています。
 昭和37年につくられた『赤ちゃん百科』や昭和50年初版の『乳幼児栄養テキスト』を見ると、母乳だけで育てれば6ヶ月を過ぎる頃から「体がぶよぶよとして、顔色が黒く悪くなってくる」「これはいわゆる〈貧血色〉というもので、栄養が足りない、ミネラルやビタミンが足りない、とりわけ鉄不足のために起こっている」「だからこそ、鉄分ヤミネラルを補った人工乳(粉ミルク)や離乳食がぜひとも必要になるのだ」という趣旨のことが書かれています。
 しかし、1歳2ヶ月半まで母乳だけで育ったYちゃんは、少しも「ぶよぶよ」とせず、顔色もつやつやと輝き、血色も豊かです。栄養不足の症状は少しもなく、鉄分が不足してなるという「黒ずんだ悪い顔色」などまったくありません。母乳のみで十分に赤ちゃんに必要な栄養分は足りてきたことを示しており、それもとても賢く育っているのです。
 ちなみに、身長と体重から正常な成長を判断する尺度としてしばしば使われるカウプ指数(体重g÷身長cmの二乗×10)は、13以上であれば正常値で、2歳ぐらいまでの赤ちゃんの場合、平均値は16前後です。Yちゃんの場合は9ヶ月で16.4、1歳で15.9、1歳6ヶ月で17.7となっていて、十分に平均的な体重を保っていることがわかります。このように、母乳育ちでゆっくり離乳食を始めたお子さんは、どの子もピカピカの体に育つということを、知っていただきたいと思います。

(「すくすく通信」67号より)


娘の健康を取り戻した信念の母乳育児(「すくすく通信」67号より)

Yさん・Mちゃん(2歳3ヶ月)

母乳で育てたいのに、障害がたくさん

今の日本では、「母乳だけで1年間は育てる」と言ったら、保健所、医師、祖父母、友人など周囲の方がびっくりして反対なさるのではないでしょうか。現在の日本では、赤ちゃんの離乳食開始は5ヶ月からとされています。ですが、私は自分の子育ての体験から考えて、それで本当にいいのかどうしても納得ができず、悶々としていました。
私が調べたところによると、アメリカでは、かつては離乳食を早く進めることが良いとされていましたが、その常識は今では完全に覆されました。20年前まではアメリカの医学界では粉ミルクを赤ちゃんに勧めていましたが、いろいろな調査や研究の結果、母乳の重要性が指摘され、国をあげて母乳育児を目指しているそうです。今アメリカでは、母乳育児をしたいと宣言すると、8人くらいの母乳育児をすすめるスタッフが母乳を出すために一生懸命力をかしてサポートしてくれるそうです。アメリカでは、国をあげて母乳育児の支援体制がしっかりできているということなのですね。
 私も、娘の妊娠中から山西みな子先生の「もっと自由に母乳育児」(農文協)や「あなたにもできる母乳」(食べもの通信社)などを読んで母乳の大切さを認識し、出産後はなんとしても母乳中心で育てようと決意しておりました。
 ところが、出産していざ母乳育児を進めていこうと思うと、いろいろな障害があることを知ったのです。まず、出産した産院では生まれた直後から母子別室で、授乳のときしか子どもに会えません。そのため、子どもの空腹のリズムや私のお乳の張りなどとは無関係に、決められた時間しか授乳ができないのです。退院後は、娘が2500gとやや小さめに生まれたせいか、母乳だけで育てていると言うと、保健婦さんや小児科の先生、両親や友だちなどから、体重が増えてもっと大きくなるよう、ミルクを足しほうがいい。というアドバイスをたくさん受けました。でも、たしかに娘は小柄ですが、母乳だけで体重増加は順調だし、機嫌もよく発育上何の問題もないのです。なのに本当にミルクを足す必要があるのか、私はとても迷い、混乱してしまいました。

離乳食は“落ちこぼれ”だった

 さらに、離乳食準備が始まった頃からは、いろいろ困ることが起こってきたのです。まず、4ヶ月目頃、市の離乳食教室で果汁を飲ませるようにと指導されましたが、母乳100%だった娘は哺乳びんの乳首を受け付けず、無理に果汁を口に入れてもすぐに吐いてしまう状態でした。それでも5ヶ月目からは、マニュアルどおりに離乳食を開始しましたが、いくら工夫していろいろ作って与えてもなかなか食べてくれず、娘は母乳ばかり欲しがるのです。それでも、離乳食を食べさせないと栄養が足りないのではと思い、何とか食べさせようと努力する毎日でした。7ヶ月目頃からは、離乳食にタンパク食品を加えるよう指導されましたが、その頃になっても娘はドロドロのおかゆをやっと少し食べる程度。
 しかも、無理にタンパク食品を食べさせると必ず下痢をしてしまうので、「何かおかしい」と思いつつも、きちんと離乳食が進んでいないと健診時の栄養相談などで叱られると思い、しかたなくマニュアルどおりの離乳食を続けていました。けれども、離乳食はまったくうまく進まず、「離乳食落ちこぼれ」だったのです。せっかく作った離乳食を、娘はほとんど食べてくれないので、「これでは、栄養不足にならないかしら?」と不安になったり、離乳食を拒否する娘がもどかしくてつい責めてしまい、そんな自分に自己嫌悪を感じたり。 さまざまな思いが複雑に絡み合い、当時の私は育児ノイローゼ寸前だったかもしれません。

西原博士の育児書に、目からウロコ

 そんな思いでいた8ヶ月のとき、「家庭保育園」に入会しました。そして、娘が離乳食を拒否してうまく離乳が進まないことも、「西原博士のかしこい赤ちゃんの育て方」を読んで、目からウロコが落ちるように「なるほど!」と納得したのです。そこで、無理に離乳食を与えるのをやめ、自信を持って娘の欲しがる母乳中心で育てることに決めました。
 今思うと、離乳食を食べさせていた頃は、娘の体に合わない食べ物は消化できずに、そのままの形で便となって出てくることがしょっちゅうでした。また、下痢をしなくても、母乳のみのときと違って山吹色のいい便が出ることはなく、いつも緑便だったり軟便が出たりしました。しかも、離乳食を消化しきれず苦しいのかうつぶせ寝もしていましたし、週に一度はたいてい熱を出していたのです。さらに、理由もなくグズったり泣いたりすることが多く、いつも不機嫌な感じでした。

●Mちゃんの飲む・食べるスケジュール
(母乳中心に、ご飯を主とした少量の食事という食生活が毎日繰り返えされています)
6:00 起床、母乳
7:30 母乳、朝食(海苔入りおじや・子ども茶碗1/2杯、野菜の煮物・子ども茶碗1/4杯)
8:00 母乳
10:00 母乳
12:00 母乳、昼食(梅干と一緒に炊いた軟らかご飯に海苔のふりかけ・子ども茶碗1/2杯、デザートとしてりんごの蒸し煮少々)
14:00 母乳
16:00 母乳
17:30 母乳、夕食(野菜入りおじや・子ども茶碗1/3杯、野菜の煮物・子ども茶碗1/4杯)
18:00 母乳
19:30 母乳、就寝 (※この後、23:00と3:00に授乳。夜中も2回程度飲ませたほうが、あっさりしてサラサラのいい母乳が出るそうです)

母乳中心に戻し、すっかり健康に

 不安もありましたが、思い切って離乳食をやめて母乳中心に戻したところ、娘は母乳をよく飲んで終始機嫌がよくなり、情緒が安定してきたのです。また、離乳食を食べていた頃のような緑便や黒っぽい便が出なくなり、いつも山吹色のいい便が出るようになりました。体格は、もともと小柄ですし筋肉質でスリムでしたが、母乳中心に切り替えてから身長がぐんぐん伸び、2歳3ヶ月の今でも母乳中心で幼児食はごはんをほんの少ししか食べていないのに、最近ではふっくらしてきて、身長95cm、体重11kgと、発育は全く順調です。そして、いたって元気で健康そのものです。以前と比べてかぜをまったくひかなくなり、熱を出すこともなくなったのは、何より嬉しいことですね。
 母乳育児を続けるには、いい母乳を出さなければいけないと、私も食事には相当気をつかったり、2ヶ月に1度山西先生の母乳マッサージを受けたりと、努力しています。山西先生の所に母乳マッサージに行くと、母乳中心ですくすく育っているお子さんを自分の目で確かめることができるので、安心感を得るためにも通っています。母乳の子は本当に目がキラキラと輝き、落ち着きがあるので、「お母さんを困らせるようなことは、ほとんどないですよ」と、山西先生もおっしゃっています。また山西先生は、「母乳の子は赤ちゃんでありながら、“人品卑しからず高貴な雰囲気をかもし出している”」と、子どもの見方を教えてもくださいます。さらに、山西先生は母乳マッサージをしながら、子どもをどのように見て、どのように接したらいいかなどなど、母親としての自覚についても教えてくださるので、大変勉強になっています。
 母乳のほかにも、うちでは西原先生に勧めていただいたオシャブリをさせ、あおむけで寝かせることを実行するようになりました。特にオシャブリの効果は絶大で、不正交合だったのが1ヶ月で治り、あごの形も少しずつ変わってきて、歯並びもよくなってきました。娘は私がオシャブリをするとよろこんで自分もするので、今、親子で仲良くオシャブリをしています。
 西原先生には、最初に受診してから今でも2ヶ月ごとに診察を受け、娘の状況をよく診ていただき、娘に合ったやり方を指導していただいています。私も母乳のことや西原先生の理論など、よく調べたり勉強をして納得したうえで取り入れ、子どもの機嫌や便の状態などを常によく見ながら母乳育児を続けていることが、今の娘の健康につながっているのだと確信しています。
 21世紀に向けてすばらしい人材を世に送り出すため、私たち母親がわが子にできる最大のプレゼントが、母乳育児を行い、健康な体にしてあげることだと、今本当に実感しています。子育てに行き詰まっていたとき西原先生の本とめぐり合い、本物の正しい育児に目覚めることができ、心から感謝しています。これからも母親としての直感を信じて、自信を持って母乳中心育児と、幼児食を少々、そしてオシャブリを続け、私なりの子育てをしていこうと思っております。

(「すくすく通信」67号より)


ミルク中心に切り替え、アトピーが治った(「すくすく通信」67号より)

兵庫県 Rさん、Tちゃん(1歳11ヶ月)

マニュアルどおりの離乳食で、突然アトピーに

 Tは2465gとやや小さく生まれましたが、生後間もなくから母乳とミルクの混合栄養ですくすく育っていました。生後5ヶ月のときには、母子手帳や保健婦さんなどの指導を参考に離乳食を開始。メニュー本を片手に頑張って離乳食を作り、ドロドロのおかゆや野菜のマッシュなどを食べさせました。Tも順調に食べてくれたのでマニュアルどおりに離乳食を進め、7ヶ月のときには鶏ささみ肉や白身魚、卵黄などのタンパク食品も食べさせるようになったのです。さらに、9ヶ月のときには赤身の魚や豚、牛などの肉類、豆腐などの豆製品、乳製品も与え、ミルクはフォローアップミルクに切り替えていました。これが当たり前と思っていましたし、子どもの発育に必要な栄養だと思い、いろいろな食品を毎食ごとにせっせと与えていましたが、特にトラブルもなくTは育っていました。
 ところが、10ヶ月のときに鼻かぜをひいて体調が悪かったとき、離乳食に魚のカレイを食べさせたところ、翌朝急に耳の中や鼻の粘膜がグジュグジュしてきて、目の周りには湿疹ができてしまったのです。湿疹はあっという間に顔中に広がり、やがて太股やお腹など体中にも広がってしまいました。すぐに小児科や耳鼻科を受診し、塗り薬や飲み薬を処方してもらいましたが、湿疹は治りません。かゆみが強いようで、Tは湿疹をかゆがって顔をかきむしり、夜も寝つきが悪く眠りも浅くてウトウトする程度。そのせいか、日中もボーッとして精気のない顔つきになってしまいました。そして、血液検査の結果、アトピー性皮膚炎だと診断されてしまったのです。

ミルク中心にしたら、湿疹がみるみる解消

 ちょうどその頃、「すくすく通信」で西原先生の特集記事を読み、藁にもすがる思いで西原先生に相談してみました。すると、先生は「タンパク質を早くから与えたことが原因のアトピー性皮膚炎でしょう。まず、すぐに今までの離乳食はやめて、乳児用の粉ミルクのみに切り替えなさい」と指示されたのです。本当は母乳のほうがいいそうですが、その頃にはもう出なかったからです。フォローアップミルクはタンパク質が分解されていないそうですが、乳児用粉ミルクならタンパク質が細かく分解されているので吸収されやすく、アレルギーも出にくいとのことでした。
 また、Tは鼻づまりもあって口呼吸をしていたので、鼻呼吸の習慣をつけるために、オシャブリもさせ始めました。さらに、冷たいものは腸を冷やすので絶対与えないようにと言われ、ミルクも38度くらいに温めて飲ませるようにしたのです。 こうして、西原先生の指示どおりの生活に切り替えたのですが、正直言って最初は「乳児用ミルクだけで、栄養は足りるのかしら?」と、不安に思ったものです。でも、効果はてきめんでした。ミルクのみに切り替えたらみるみる皮膚の状態がよくなり、3~5日もすると、鼻や耳のグジュグジュも治ってきて、顔や首あたりの湿疹も目立たなくなってきたのです。そして、1週間もすると顔はすっかりきれいになり、10日目には体の湿疹もほぼおさまったのには、本当に驚きました。

●Tちゃんの飲む・食べるスケジュール
(ミルクを中心に、ご飯を主とした少量の食事という食生活が毎日繰り返えされています)
7:00 起床、ミルク・80 ml
10:00 ミルク・80 ml、食事(塩味のおかゆ・子ども茶碗8分目、のり、野菜の煮物少々)
12:00 ミルク・80 ml
14:00 ミルク・80 ml、食事(軟らかご飯にのりとゆかりのふりかけ・子ども茶碗1/2杯)
16:00 ミルク・80 ml
18:00 ミルク・80 ml、食事(野菜入りおじや・子ども茶碗1/2杯、野菜の煮物少々)
20:30 ミルク・80 ml、就寝

「離乳食はゆっくりあせらず」で、すっかり健康に

 この喜びを先生に報告すると、1歳過ぎたら白米のおかゆや葛、スターチ類を少しずつ与えてもいいとのこと。目の前でみるみるTのアトピーがよくなっていくのを見て、先生のやり方に従って間違いないと確信していたので、今度は迷いもなく実行しました。そこで、1歳5ヶ月頃までは乳児用ミルクを中心に、白米のおかゆや、葛粉、スターチを溶いたものと、りんごのすりおろしなどを少しずつ与えていました。1歳5ヶ月過ぎになってやっと、一般的には5ヶ月から始める離乳食「初期」のような食事を少しずつ与え始めてよいとのことでした。そこで、水晶米の重湯を与え始め、ゆっくりあわてず野菜スープなども与えていったのです。もうすぐ2歳になりますが、今は乳児用ミルクを1回80mlくらいずつ1日に6~7回飲ませ、食事はご飯を子ども茶碗に八分目くらいと、のりや味噌汁を少し食べさせています。少しかぜ気味のときなど、体調が悪いときには便がすぐ緑色になるので、そういうときはすぐ乳児用ミルクのみにしました。すると、便の色がまた黄色になり元気になりますので、子どもの便の色を見ながらいつも黄色のいい状態の便が出るよう、離乳食の量は加減しながら与えています。
 おかげで、アトピー性皮膚炎はすっかり落ち着き、Tは元気一杯動き回り、元気で生き生きとしています。もともと小柄な子でしたが、1歳半健診のときに発育が悪いと言われたら、と心配しましたが、小柄ながら発育も順調とのことで、ひと安心しました。小さいながらもバランスがとれてしまった体つきをしています。ミルク中心に切り替えてからは、顔つきも引き締まって目もキラキラと輝き、子どもらしくなってきました。離乳食をたくさん与えていて、アトピー性皮膚炎が全身に出ていた頃は、顔つきもボーッとして目もトロンとした状態だったのが、ウソのようです。腸の働きが大人に近づく2歳半頃までは、今のペースでミルク中心の食生活を続けるつもりです。
 小さな赤ちゃんにとって、タンパク食品を早くから与えることがどんなに恐ろしいかを知らずに、体にいいと思ってどんどん食べさせていたのは、悔やんでも悔やみきれません。でも、西原先生のご指導で間違いに気づかせていただき、乳児用ミルクに切り替えたおかげで、Tはすっかり健康を取り戻すことができ、西原先生には家族全員、感謝の気持ちでいっぱいです。

(「すくすく通信」67号より)