西原ワールド アート医研

日本免疫治療研究会 設立趣意書

日頃、外来診療を重ねる医師の苦悩として、治らない患者にどのように接するかという問題があります。特にそれが強い痛みや生活上の大きな不利益を伴う場合、ともすれば患者自身感情的となり、医師にとってもその訴えに接するだけで非常な精神的苦痛を感じるものです。治らない病気にも様々なものが考えられます。かつては結核が死に至る病と言われた頃から、やがて癌という病名が伏せられていた時代を経て、今日の医学があります。今、結核には化学療法があり、癌には早期の根治療法が有効ですが、まだまだ医学の目指す地平は遙か彼方にあります。
私たちが注目するのは、ステロイドの登場によりかつてのように悲惨な経過を辿ることこそ少なくなりましたが、現状では未だに成因も根治療法も不明とされている疾患群です。炎症は何故生ずるのでしょうか。自己抗体とは何なのでしょうか。自己と非自己を認識するのが免疫の本質だとする考え方は、正しいのでしょうか。また、免疫寛容という現象はなぜ生ずるのでしょうか。現状の免疫学ではこれらの問いに一切答えがありません。
解決の糸口は、生物の進化にあります。人間が長い時間経過の中で、原始脊椎動物から、因果律に則って進化を遂げてきたことはまぎれもない事実です。免疫システムは、他のすべての器官がそうであるように、連続した時間の中で変容した能力であり、ある時突然に何らかの目的を持って設計されたシステムではないはずです。
この様な考え方にたって免疫システムとは何かを考察し、免疫病がなぜ発症するのか深く観察し、根治する手だてがないといわれている免疫病を何とか治したいと切望しております。この趣旨の下に日本免疫病治療研究会を設立致す次第でございます。何卒ご参加のほどをお願い申し上げます。

本会は自由参加とし、1年間に1度から2度の研究発表の場を持ち、参加者は誰でも発表できるものとし、運営は当日参加費で行うことと致します。

発起人
安保 徹 新潟大学医学部 医動物学教授
生島 ヒロシ キャスター
伊藤 泰雄 山北診療所
猪子 英俊 東海大学医学部 分子生命科学教授
上田 貴文 国立西埼玉中央病院 循環器・膠原病内科
大浦 元孝 大浦医院
大西 啓靖 国立大阪南病院副院長 整形外科
川田 信昭 有隣病院
木谷 誠一 東京大学保健センター 内科
近藤 鉄雄 新時代戦略研究所代表取締役(元労働大臣、元経企庁長官)
関田 孝晴 東京大学医学部
関根 國彦 帯津三敬病院内科
高草木 護 愛康クリニック
永野 剛造 永野医院
西原 克成 東京大学医学部 口腔科
平野 功 平野歯科医院
廣瀬 拓司 東京大学医学部 整形外科大学院
福岡 明 明徳会理事長
福田 稔 福田医院
松井 義雄 ノムラインベスターリレイションズ社長
田中 襄一 ノムラインベスターリレイションズ企画部長
三森 明夫 埼玉医科大学 リウマチ膠原病科助教授
矢澤 一浩 日本口腔健康医学会前会長
山本 有二 衆議院議員

日本免疫病治療研究会設立趣意書

日頃、外来診療を重ねる医師の苦悩として、治らない患者にどのように接するかという問題があります。特にそれが強い痛みや生活上の大きな不利益を伴う場合、ともすれば患者自身感情的となり、医師にとってもその訴えに接するだけで非常な精神的苦痛を感じるものです。治らない病気にも様々なものが考えられます。かつては結核が死に至る病と言われた頃から、やがて癌という病名が伏せられていた時代を経て、今日の医学があります。今、結核には化学療法があり、癌には早期の根治療法が有効です。まだまだ医学の目指す地平は遙か彼方にあります。
私たちが注目するのは、ステロイドの登場によりかつてのように悲惨な経過を辿ることこそ少なくなりましたが、現状では未だに成因も根治療法も不明とされている一群の疾患群です。炎症は何故生ずるのでしょうか。自己抗体とは何なのでしょうか。自己と非自己を認識するのが免疫の本質だとする考え方は、アリストテレスまたはキリスト教自然神学の目的論に立脚しています。科学の方法論として、誤った目的論思考から脱却すれば、「自己抗体」など自然科学思考から生まれるはずのない考え方です。また、免疫寛容という現象はなぜ生ずるのでしょうか。現状の免疫学ではこれらの問いに一切答えがありません。
解決の糸口は、生物の進化にあります。これまでの目的論的免疫学は誤っていたのです。人間が長い時間経過の中で、原始脊椎動物から、因果律に則って進化を遂げてきたことはまぎれもない事実です。免疫システムは、他のすべての器官がそうであるように、連続した時間の中で変容した能力であり、ある時突然に何らかの目的を持って設計されたシステムではないのです。
この様な考え方にたって免疫システムと免疫力について考えてみましょう。免疫力とは疫(病気)をまぬがれる力のことです。これは実際には血液細胞(白血球、赤血球、組織球)の消化力のことです。抗原抗体反応も消化の一つの様式にすぎません。この消化には呼吸と解糖から得られるエネルギーが必要です。呼吸には酸素を肺と皮膚から取り込む外呼吸と、取り込まれた酸素を細胞が消費して旧くなった細胞をリモデリング(つくり換え=新陳代謝)したり、入って来たバイ菌やウィルス・花粉などの蛋白質を消化する時に必要なエネルギーを作り出す内呼吸(細胞呼吸)があります。内呼吸がうまくいくと細胞レベルの消化力が強まり、結果として免疫力が高まります。呼吸法で免疫力が高まるのは���のためです。この細胞消化力は当然腸の食物の消化力に依存します。従って腸をだめにする暴飲暴食や胃腸を冷やすこと、水や酒を飲みすぎると免疫力がおとろえて免疫病になります。腸の消化力は、ヒトでは特に口腔内消化つまり咀嚼に依存します。腸を暖めていても、口呼吸を行えば健康は得られません。
生命現象は宇宙の最も高次の反応系です。生体力学刺激というエネルギーによって異所性ならびに異種性に人工骨髄造血巣の誘導が可能なのは、進化が物理的・化学的刺激にもとずいた因果の理法に則って起こるためです。咀嚼の微小のゆすぶりによって生ずる振動のエネルギーでセメント質と歯根膜を持つ哺乳動物の歯の特徴を有する人工歯根の開発も可能となりました。人工骨髄も人工歯根もともに、移植した患者さんや動物の細胞遺伝子の引き金がエネルギー(力学刺激)によって引かれると、細胞が種々の酵素や蛋白質を作るのです。生命体の形の形成と機能の発現は究極では大部分が細胞遺伝子の機能発現に依存しています。エネルギーと質量を持つ物質とは究極の世界で互いに互換性があります。これが「エネルギー保存の法則」と呼ばれるもので、20世紀の最大のサイエンスの成果です。
生命体はすでに地球上では30億年も前から種々のエネルギーを蛋白質や糖類・脂質や核酸に変換していたのです。しかも生命体の持つ生命の情報系の核酸から成る遺伝子の機能発現によって、エネルギーを質量のある物質に変換し、またこの逆を行っているのです。化学工場も高圧高温のエネルギーも不要です。脊椎動物の三つの謎(進化・免疫・骨髄造血の発生)が解け、免疫病もわけなく治したり、予防することが可能となります。20世紀のライフサイエンスは、殆どすべての現象を質量のある物質のみで解明しようとむなしい努力をして来ました。遺伝子ももとより質量を持つ物質ですが、ゲノムをいくら解読しても駄目なのです。遺伝子が眠っていては何事も起こりません。ヒトの胎児は成体型の遺伝子をすべて持っていますが、胎児型の遺伝子のみが発現しておりますからすべて胎児の蛋白質でできています。それで組織免疫も無く血液型もサメと同じ0型なのです。遺伝子が正しく発現するかしないかが問題なのです。そしてこの引き金を引くのが酸素・栄養・ミネラルのほかに種々のエネルギーがあり、この引き金を狂わせるのが我々のヒトの個体に降り注ぐ不適当なエネルギーと寄生体つまり個体以外の寄生したウィルス、バクテリア、原虫、寄生虫の遺伝子の共生です。ここまで解かれれば、エネルギーの正しい制御で免疫病を治すことが可能となります。漸くここに世界に先駆けて治る免疫学が樹立されるのです。病気が治せる正しい免疫学の樹立のために日本免疫病治療研究会設立にご賛同をお願い致します。

平成13年2月24日(土)