A. 母乳のみでも、栄養面は全く心配いりません。
ただし、お母さんが十分に鉄分の含まれる食事をとり、その栄養が含まれた母乳からたくさんのミネラル、鉄分、ビタミンをとることが、赤ちゃんの腸の吸収にとって最もよいやり方なのです。
動物学的にいうと、4歳ぐらいまでは母乳のみでかまわないのです。人間に近い類人猿のオラウータンやゴリラは、2歳まで母乳のみで健康に育ちます。彼らの成長の速さは人間の倍ですから、ゴリラの2歳は人間でいうと4歳。ですから、本来4歳頃までは母乳のみで栄養面は問題がありません。
ただ、ずっと母乳のみだと、赤ちゃんが貯えた鉄分が不足するという理由から鉄分補強の人工乳や離乳食を与える必要があると一般には言われています。たしかに、鉄はヒトの体の中でわずかな量しか必要ありませんが、なくてはならないものです。体の中の鉄分の多くは赤血球の中に含まれていて、ヒトの赤血球は老化して分解されます。しかし、分解された鉄分は新しく生まれた赤血球にそのまま利用されますし、その他の鉄分の多くも再利用されますから、体内の鉄分はリサイクルされて使われそれほど多くを補給する必要はありません。
さらに、乳児初期に多めの鉄分を与えることは、母乳中に含まれるラクトフェリンの抗菌活性を阻害し体の抵抗力を弱める危険さえあり、鉄分は与えればいいというものではないのです。
また、鉄分補給のため牛乳を与えるのが良いといわれていますが、赤ちゃんに生の牛乳を与えると、含まれている鉄分が少ないだけでなく、牛乳が腸管を刺激して体内の鉄分は少しずつ減ってゆきます。この習慣が続くと、相当量の鉄分がなくなってしまいますから、むしろ牛乳で鉄不足になり、顔色まで悪くなることさえあるのです。 |