西原ワールド アート医研

内臓が生みだす心(2002)

内臓が生みだす心(2002)目次
第一章 進化からみたヒトの身体の発達
第二章 ヒトの発達と老化
第三章 子どもの身体発達
第四章 ヒトの一生における身体発達と老化

内容
心肺同時移植を受けた患者は、すっかりドナーの性格に入れ替わってしまうという。
これは、こころが内臓に宿るということを示唆している。
「腹がたつ」「心臓が縮む」等の感情表現も同様である。
高等生命体は腸にはじまり、腸管がエサや生殖の場を求めて体を動かすところに心の源がある。その腸と腸から分化した心臓や生殖器官、顔に心が宿りあらわれる、と著者は考える。
人工臓器の開発で世界的に著名な名医が、脊椎動物の進化を独自に明解し、心や精神の起源を探る注目作。

 NHKブックス/¥920(税別)/2002


小泉英明氏ご推薦
西原克成氏の思索は、わが国に稀有とも言える壮大なスケールを感じさせる。頭を使うとは、こういうことを言うのだろう。学問の細分化をもたらした要素還元論の近代が終焉し、俯瞰的マクロ感をもった新時代の黎明を予感させるものがある。細部には独特の言い回しがあるが、生命の本質を看破した内容は魅力に溢れ、かつ示唆に富んでいる。解剖学の精密な所見から進化を科学的に捉えた、天才三木成夫の正統後継者と言えるだろう。

書評:くめかわまりお氏